電気工事業法とは?電気工事士の資格を取得するための基礎知識

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電気工事業に関する事業所や工場、仕事に就く方は「電気工事業法」について必ず把握しておかなければなりません。電気を扱う仕事は危険が伴います。感電・火災など事故のリスクが高いため、事前に基礎知識を把握することが必要不可欠です。

これから、電気工事業法とは何なのか、電気工事業法に関する国家資格や資格試験、勉強法など詳しく説明します。電気工事業法について知りたい方、関連する資格を取得したい方はぜひチェックしてください。

  1. 電気工事業法とは?
  2. 電気工事業法の登録・届け出について
  3. 電気工事業法に関連する国家資格
  4. 資格試験について
  5. 資格試験の勉強法・講習について
  6. 電気工事業法・資格試験に関してよくある質問

この記事を読むことで、電気工事業法の内容を知り、資格試験の合格に必要な知識を身につけることができます。資格試験の内容について把握すれば、時間を有効に使いながら勉強できるでしょう。


1.電気工事業法とは?

電気工事業には大切な法律「電気工事業法」があります。電気工事に関連する資格を取得したい方は、必ず電気工事業法について知らなければなりません。

1‐1.電気工事業法の概要

「電気工事業の業務の適正化に関する法律」が通称電気工事業法と呼ばれているものです。電気工事業法には電気工事業を営む者の登録・業務の規制などが定められています。電気工事業を行っている会社・事業所は必ず規則を守らなければなりません。

1‐2.電気工事業法の目的・必要性

電気工事業法は、電気工事に関する業務の適正な実施と、一般用・自家用電気工作物の保安確保が目的です。法律における電気工事業とは電気工事を行う事業全体を指しています。電気工事業についての規則を統一化することで、安全・安心な電気工事を行うことができるのです。

1‐3.電気工事業法が適用される場所

電気工業法が適用される場所は一般用・自家用電気工作物の設置・変更を行う電気工事店などです。また、電気工事における配線・電灯・送電線・電力機器などの専門工事も当てはまります。

2.電気工事業法の登録・届け出について

電気工事業法に当てはまる会社は登録・届け出をしなければなりません。これから、登録できる会社とできない会社の違い、軽微な電気工事などについて詳しく説明します。

2‐1.登録できる会社とできない会社

電気工事業法に基づいた条件によって、登録できる会社とできない会社があります。登録できる会社は軽微な電気工事に当てはまらない会社です。逆に、軽微な電気工事に当てはまる会社は登録の必要がありません。

2‐2.軽微な電気工事とは?

登録できない会社に当てはまる6つの軽微な電気工事について説明します。6つの軽微な工事に当てはまる会社は登録する必要がありません。

  • 電圧600V以下で使用するケーブルなどの接続工事
  • 電圧600V以下で使用する電気機器や電線などのねじ止め工事
  • 電圧600V以下で使用する電力量計やヒューズなどの取りつけ・取り外し工事
  • 電鈴・インターホン・火災感知器など施設に使用する配線工事
  • 電線柱や腕木などの工作物設置・変更工事
  • 地中電線用の設置・変更工事

2‐3.軽微な工事に当てはまらない会社

軽微な工事に当てはまらなかった会社は電気工事業法に基づいて登録・届け出をしなければなりません。登録・届け出内容には全部で4種類あります。

  • 登録電気工事業者
  • 通知電気工事業者
  • みなし登録電気工事業者
  • みなし通知電気工事業者

建設業の許可を取得している会社は「みなし」、許可を取得していない会社は「みなし無し」の登録・届け出になります。「登録」と「通知」の違いは、取り扱っている電気工作物の違いです。一般用電気工作物の取り扱いに関係しているのなら「登録」、事業用電気工作物のうち自家用電気工作物で500kW未満の需要設備なら「通知」になります。

2‐4.登録・届け出について

電気工事業法の登録を行う際、申請書の提出先は都道府県知事です。ただし、都道府県知事に届け出をする場合は一つの都道府県の区域内だけ営業所を設置している会社に限ります。二つ以上の都道府県に設置している営業所のうち、一つが産業保安監督部の区域内の場合は産業保安監督部長への提出です。また、二つ以上の産業保安監督部の区域なら経済産業大臣あてになります。以上のように、登録・届け出申請先は三つに分かれているので注意してください。

3.電気工事業法に関連する国家資格

それでは、電気工事業法に関連する国家資格について見ていきましょう。電気工事に関連する資格を取得したい方はぜひチェックしてください。

3‐1.電気工事士

代表的な国家資格といえば「電気工事士」です。電気工事士の資格とは一体どんな内容になっているのでしょうか。第1種・第2種電気工事士について見ていきたいと思います。

3‐1‐1.第1種電気工事士

電気工事士は電気工事で起こる災害やリスクを防止するために必要な資格です。第1種電気工事士は第2種よりもレベルが高く、ビルや大型商業施設など大規模施設で必要とされる資格でもあります。幅広い自家用電気工作物と一般用電気工作物の工事に就ける資格者です。

3‐1‐2.第2種電気工事士

第2種電気工事士は住宅・商店街などの一般用電気工作物の工事に従事できる資格です。ビル・大型施設内での自家用電気工作物は取り扱えません。一般用電気工作物だけ取り扱いたい方には第2種電気工事士の資格で十分でしょう。

3‐2.その他

電気工事士以外にも、認定電気工事従事者・特殊電気工事資格者・電気工事施工管理技士といった資格があります。認定電気工事従事者は電圧600V以下で使用する自家用電気工作物を取り扱うことができる資格です。特殊電気工事資格者は「ネオン工事」「非常用予備発電装置工事」と、特殊な分野の電気工事に従事できます。そして、電気工事施工管理技士は国土交通省が実施している試験です。電気工事の実施計画・施工図の作成・工程管理・安全管理などを行います。

3‐3.資格取得のメリット

資格を取得すれば、就職・転職に有利です。電気工事業法に関する資格取得者のほとんどが転職のため、スキルアップのために資格を取得しています。資格者は電気工事業法・電気工事に関しての専門的知識を持っている証になるので、雇う会社も安心して任せられるのです。スキルアップしたい、転職に役立てたい方はぜひ資格取得を目指してください。

4.電気工事士の資格試験について

資格取得の前に、電気工事士の試験資格や試験の概要、試験内容、合格率・難易度について情報収集しておきましょう。試験についてよく知ることも合格するポイントの一つです。

4‐1.試験資格

電気工事士は年齢など受験資格制限がありません。誰でも受けることができる資格試験です。ただし、第1種電気工事士は免状交付時に実務経験が必要になります。実務経験と認められる5年以上の電気工事、または指定課程を修めた方は3年以上の電気工事が必要です。

従って、実務経験がない人は、試験に合格しても免状の交付が受けられません。試験合格には変わりありませんので、合格通知は大切に保管しておいてください。

4‐2.試験の概要

電気工事士の試験日時や実施地域、受験料、申し込み方法について説明します。

4‐2‐1.試験日時

国家資格となる電気工事士の試験日時は第1種と第2種で異なります。第1種は毎年1回、10月ごろ~12月ごろにかけて筆記・技能試験が行われるのです。第2種は上期・下期の2回に分かれています。上期試験は6月ごろ・下期試験は10月ごろ開催です。

4‐2‐2.試験実施地域

試験が実施される地域は日本全国、各電気技術者試験センターになります。住まいの近くにあるセンターでの試験になるので、詳細は下記のHPをチェックしてください。

一般社団法人電気技術者試験センター

4‐2‐3.受験料

受験料は申し込み方法と資格試験の種類によって異なります。

  • 第1種…インターネット申し込み 10,900円、郵送申し込み 11,300円
  • 第2種…インターネット申し込み 9,300円、郵送申し込み 9,600円

4‐2‐4.申し込み方法

申し込み方法はインターネットまたは郵送、どちらかの方法になります。インターネットの場合は「一般社団法人 電気技術者センター」から申し込み可能です。郵送の場合はゆうちょ銀行の振込取扱票による申し込みになります。請求した受験案内・申込書に受験申込書が入っているので必要事項を記入してから受験手数料と一緒に窓口へ提出してください。受験料を安く済ませたい方はインターネット申し込みがおすすめです。

4‐3.試験の内容

試験内容は筆記試験と技能試験の二つになります。電気の基礎理論・電気工事に使用する工具の種類・施工方法・計算方法・配線図・配線設計などです。筆記試験は実践的な内容が増えています。そして、技能試験は問題用紙に記載された単線図を複線図に作成して実際に施工する内容です。工具は自分で用意しなければなりません。

4‐4.合格率・難易度

電気工事士の難易度は易しいです。第1種が60%前後・第2種が55%前後になっています。合格率は年度によって若干の変動がありますが、しっかり勉強すれば合格できます。

5.資格試験の勉強法と合格後の講習について

資格試験の勉強は何をすればいいのか分かりませんよね。そこで、おすすめの勉強法やテキスト、講習について詳しく説明します。

5‐1.テキスト

テキストは自分にとって分かりやすい内容になっているかどうか、試験のポイントを押さえた内容になっているかどうかが最大のポイントです。また、数冊購入して勉強する方がいますが、テキストは1冊だけにしてください。なぜなら、1冊を何回も読み直したほうが分かりやすいからです。何冊も購入していてはテキストの内容を理解するまで時間がかかってしまいます。

5‐2.合格後の講習について

一般社団法人 電気工事技術講習センターでは「第1種電気工事士定期講習」や「認定電気工事従事者認定講習」「特殊電気工事資格者認定講習」が実施されています。第1種電気工事士は5年に1回、定期的に講習を受けなければなりません。常に新しい知識・情報を取得することで、正しい電気工作物の扱い方ができます。

一般社団法人 電気工事技術講習センター

6.電気工事業法・資格試験に関してよくある質問

電気工事業法に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。これから、電気工事業法に関連する資格を取得しようと考えている方は、ぜひチェックしてください。

Q.電気工事士の試験前にやるべきことは?
A.電気工事士の試験前には、必ず試験会場に足を運んでください。実際、試験会場が分からず試験を受けることができなかった方がいます。また、試験前は毎回引っかかってしまう問題を中心に過去問を反復練習してください。

Q.電気工事士の過去問題が知りたい。
A.電気工事士の過去問は本でも販売されていますが、電気技術者試験センターで見ることができます。試験当日までにできるだけたくさんの過去問を解いてくださいね。

Q.高圧電気が取り扱える資格は?
A.労働安全衛生法で定められている講習の中の一つに「特別高圧電気取扱特別教育」という資格があります。この講習の受講者は、7,000Vを超える電圧の充電電路の施設・点検・操作・修理ができる資格です。この資格は、試験はありません。労働安全衛生法には、「事業者」は「労働者」が感電など危険な作業を行う人に対して、上記の講習を受講させなければならない、とあります。

Q.電気工事業法の帳簿とは?
A.電気工事業法に基づいて、電気工事業を営んでいるところは電気工事ごとの帳簿記載が義務づけられています。そして、電気工事に関する帳簿は5年間保管しなければなりません。帳簿には主に、電気工事の種類や施工場所・施行年月日・配線図・検査結果などを記載します。

Q.電気工事の資格取得者の給料はいくらぐらいか?
A.電気工事の資格取得者は無資格者よりも給料がアップします。電気工事士の平均年収は500万円~です。一般サラリーマンが400万円なので、スキルアップすればするほど給料アップが期待できるでしょう。

まとめ

電気工事業法は電気工事業を営む会社の登録や電気工作物に関する規則が定められている大切な法律です。電気工事業の仕事に就く方は必ず把握しておかなければなりません。きちんと基礎知識を身につけておけば、資格をすぐ取得でき、順調にスキルアップができるでしょう。