電気設備の点検・法定点検をマスター!関連資格もバッチリ紹介!

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電気設備は、私たちが豊かな暮らしを送るために欠かすことができない存在となります。適切に電気を使用する環境が整っているおかげで、私たちは便利に過ごすことができるのです。しかし、電気設備の正常な運営を維持するためには、定期的に点検を行うことが大切と言えます。電気設備の点検をきちんと行うことで、故障や災害を防止することができるからです。では、電気設備の点検とはどのような内容で行っているのでしょうか。

今回は、電気設備の点検や法定点検について、詳しく解説します。

  1. 電気設備とは
  2. 電気設備の点検について
  3. 電気設備の保安規程について学ぼう
  4. 電気設備の点検や保安に関する資格を解説
  5. 電気設備の点検・法定点検や資格に関するQ&A

電気設備の点検は、安全に作業を進めるための基本です。記事を読んだ人は、電気設備の基本から点検の必要性・さらには電気設備の保安規程などに詳しくなることができます。また、電気技術主任者や電気工事の資格についても理解を深めることができるでしょう。電気設備関連での仕事を考えている人や仕事をしたい人は、ぜひ読んでくださいね。


1.電気設備とは

まずは、電気設備とはどんなものなのか基本を学ぶことにします。準拠する法律や電気設備の種類などの知識を身に付けましょう。

1-1.電気設備の概要

電気設備とは、発電・変電・送電・配電・電気の使用に関する設備のことを呼びます。つまり、電気を使用するすべての設備と考えてください。発電機や変電設備・送電設備など、電気設備の種類はたくさんあります。さまざまな電気設備があることで、私たちの暮らしが豊かになっているのです。

1-2.準拠する法律について

電気設備は、電気事業法に準拠しています。電気事業法は、電気事業および電気工作物の保安を定めた法律です。電気設備の運用や保守を行うときは、電気事業法で規定された内容を守ることを心掛けてください。なお、電気事業法に関連する法律には、電気用品安全法・電気工事士・電気工事業の業務の適正化に関する法律の三つがあります。それぞれの関連資格についても内容を理解することが大切です。

1-3.電気設備の種類を解説

電気設備には、どんな種類があるのでしょうか。ここでは、電気設備の種類を具体的にご紹介します。

1-3-1.一般用電気工作物

一般用電気工作物は、一般家庭や商店などで使用する電気設備です。一般用電気工作物の条件には、以下のようなものがあります。

  • 600ボルト以下の電圧で電気の供給を受けていること
  • 外部から供給された電気を使用する目的のもの
  • 電気の受電点と電気を使用する工作物が同じ建物にあること
  • 電気の供給を受けるための電線路だけが外部に出ていること
  • 爆発や引火の恐れがある場所に置いていないこと

一般用電気工作物は、私たちが日常生活を送るために欠かすことができません。なお、一般用電気工作物には、低圧需要設備と小出力発電設備があります。低圧需要設備は、600ボルト以下の電圧で受電する電気設備のことで、小出力発電設備は家庭用太陽光パネルのように発電可能電力が小さなもののことです。

1-3-2.事業用電気工作物

事業用電気工作物は、事業用に使用する電気設備のことを言います。事業用電気工作物には、以下の2つのパターンがあることを学びましょう。

  • 電気事業用の電気工作物:発電所・変電所・送電設備
  • 自家用電気工作物:高圧・特別高圧の電圧で受電する電気設備など

なお、電気工事士では、自家用電気工作物の定義を最大電力500 キロワット未満の設備としています。

2.電気設備の点検について

電気設備は、定期的な点検が必要となります。ここでは、電気設備の点検の必要性や義務について学びましょう。

2-1.電気設備の点検の必要性を理解しよう

電気設備は、いつ不具合が起きるかわかりません。しかし、定期的な点検を行うことによって、不具合が起きるリスクを最小限にすることができます。

事業に使用している電気設備は、労働者が安全に使うことができるように保守をすることも大切です。定期的な点検をすることで、事業活動を順調に維持し、また、労働者の安全を守るためにも、電気設備の点検は必要不可欠と考えましょう。

2-2.電気設備の法定点検とは?

電気設備を保有する事業所においては、年次点検と月次点検を行う義務があります。具体的には、停電した状態で1年に1回以上の年次点検を行ってください。なお、電気設備の信頼性が高いとの認定を受けた場合に限り、3年に1回の年次点検とする場合もあります。月次点検に関しては、月に1回以上の点検を行いましょう。

2-3.電気設備の点検義務について

電気事業法第42条には、自家用電気工作物に関する保安規程があります。保安規程により、定期点検は義務化されていると考えましょう。なお、点検義務はありますが、頻度や方法などの詳細は規定していません。事業者は自社の保安規程に従って、定期点検を行っていくことになります。電気設備の保守に関しては、事業者の自主管理と高い意識を求めているのです。

3.電気設備の保安規程について学ぼう

では、電気設備の保安規程について学ぶことにしましょう。とても大切な内容ですから、しっかり頭に入れてください。

3-1.電気設備の保安規程の概要

自家用電気工作物を運用したり維持・工事を行ったりするためには、保安規程を作成する必要があります。電気設備の保安規程を作成することは、電気事業法で義務付けされているので注意しましょう。また、保安規程の作成後は届け出もする必要があります。電気設備を安全に使用するためにも、保安規程を作成し届け出を行って公的に宣言することが大切です。

3-2.電気設備の保安規程の目的

電気設備の保安規程の目的は、電気設備を正常・安全に運用することです。確固たる保安規程があることで、定期的な点検や保守管理を行うことができます。仮に、保安規程が無い場合は、電気設備の点検や保守管理がずさんになる可能性を否定できません。自社の電気設備を安全に運用するためにも、保安規程をしっかり取り決めて実行することが大切なのです。

3-3.電気設備の保安規程の主体

電気設備の保安規程の主体は、電気設備の使用者となります。自分たちが使用する電気設備について保安規程を決めて、運用・保守するからです。保安規程を決めた後は、自らが規定を守るように努力する必要があります。保安規程を決めたから安心、というわけにはいきません。電気設備の保安規程は、現実に運用してこそ意味があるのです。

3-4.電気設備の保安規程の決め方は?

電気設備の保安規程は、電気事業法施行規則第50条により一定の内容を考えて作成しなければなりません。また、保安規程に関しては届け出の義務があることを忘れないようにしましょう。電気設備は、保安管理をすることに大きな意味があります。適当に保安規程を作成しないためにも、届け出の義務があると認識しましょう。保安規程に含めるべき内容に関しては、下記も参考にしてください。

参考:電気事業法施行規則第50条

3-5.電気設備の保安規程の届け出について

電気設備の保安規程は、法律によって届け出の義務があります。また、保安規程を届け出ると同時に、主任技術者の選任も行わなくてはなりません。保安規程の届出と主任技術者の届出の両方を行って完了すると認識しておきましょう。また、保安規程を改定するときも遅滞なく届け出る必要があります。しかし、誤字・脱字の訂正など保安規程の内容に影響が無い訂正の場合は、届出の必要はありません。

3-6.電気設備の保安規程の罰則について

電気設備の法定点検を実施しないことは、法律違反です。万が一、法定点検を怠ったことが判明したときは、経済産業省の立ち入りの際に改善命令が出ます。改善命令が出てもなお、法定点検を実施しなかったときは電気主任技術者の免状返納などの罰則が科されると覚えておきましょう。

4.電気設備の点検や保安に関する資格を解説

それでは、電気設備の点検や保安に関する資格について詳しく解説をします。どんな資格が関係するのか、学びましょう。

4-1.電気設備の点検や保安に関する資格とは

電気設備の点検や保安は、専門の知識や技術を身に付けた人が行うべきでしょう。専門知識や技術があってこそ、きちんとした点検ができるからです。実際に、電気設備の点検や保安に関しては、専門の資格取得者を必要とします。

たとえば、電気主任技術者・電気工事士が代表的なものです。電気主任技術者は、電気設備の点検・保安が主な職務となります。また、電気工事士は電気設備の工事を行うときに必ず必要となる資格です。電気主任技術者・電気工事士の両方とも受験資格に制限は無く、誰でも挑戦できることから人気が高まっています。

4-2.保安管理の外注について

電気設備の保安管理については、自社で行うほかにも外注することも可能です。事業所の事情により自社で保守管理ができない場合は、外注することになります。なお、保安管理の外注に関しては、以下の要件を満たす必要があることに注意してください。

  • 600ボルト以下の配電線路を管理していること
  • 出力が1,000キロワット未満の発電所であること
  • 7,000ボルト以下の電圧で受電する需要設備であること

なお、保安管理の外注をすることができる場合は、自社で電気主任技術者の選任を行う必要がありません。

4-3.電気設備の保安や点検に関連する資格者とは

電気設備の保安や点検に関連する資格者としては、電気主任技術者が該当します。電気主任技術者の職務は、電気設備の保安や点検そのものであり専任で業務に当たることも可能です。また、保守管理以外でも電気設備の工事が関連してくるものとして、電気工事士があります。電気設備の実施や修理などは、電気工事士の担当です。電気設備の運用・保守には、いずれの資格者も必要と考えてください、

5.電気設備(工作物)と関連する資格を解説

電気設備(工作物)と関連する資格について解説します。ここでは、電気主任技術者と電気工事士を詳しくご紹介しましょう。

5-1.電気主任技術者

電気主任技術者は、電気設備のプロフェッショナルです。電気主任技術者の主な職務は、電気設備の保守・保安・点検業務となります。企業において電気設備の保守点検業務は義務となっているため、電気主任技術者の資格取得者は常に需要が高くなっているのが現状です。

5-2.電気工事士

電気工事士とは、電気設備の工事を行うための資格です。電気設備の工事は、電気の性質や電気設備に関する深い知識が必要になります。素人が電気工事を行うことは、工事ミスによる事故発生の原因になるため避けなければなりません。安全で確実な工事を行うためにも、電気設備の工事を行う人は必ず電気工事士の資格を取得する必要があるのです。

5-3.電気主任技術者と電気工事士の職務の違い

電気主任技術者と電気工事士の職務には、違いがあります。まず、電気主任技術者は電気設備の工事・維持・運用の保安監督を行うことが職務です。対して、電気工事士は電気設備の工事に関わることが主な職務となります。同じ電気設備に関わる資格であっても、職務には違いがありますのでしっかり覚えておきましょう。

5-4.電気主任技術者と電気工事士の資格概要と試験内容

電気主任技術者と電気工事士の資格概要と試験内容について、それぞれ解説します。それぞれ確認しておいてください。

5-4-1.電気主任技術者の資格概要と試験内容

電気主任技術者には、第1種・第2種・第3種の三種類の区分があります。

  • 第一種電気主任技術者:すべての電気工作物の工事・維持・運用の保安監督が可能
  • 第二種電気主任技術者:17万ボルト未満の工事・維持・運用の保安監督が可能
  • 第三種電気主任技術者:5万ボルト未満の工事・維持・運用の保安監督が可能

電気主任技術者の試験内容については、下記を参考にしてください。

  • 試験日:年1回9月(第1種と第2種は二次試験が11月)
  • 試験地:(第1種・第2種)東京など10か所、(第3種)東京など33か所
  • 試験科目:学科試験(第1種と第2種は一次試験と二次試験に分かれる)
  • 受験料:(第1種・第2種)郵便申請12,800円・ネット申請12,400円、(第三種)郵便申請5,200円・ネット申請4,850円

なお、電気主任技術者の受験資格はありませんから、誰でも受験は可能です。ただし、第3種でも工業高校電気科卒の知識が必要となっています。まずは、第3種から受験を始めることにして、十分な試験対策を行うことがおすすめです。

5-4-2.電気工事士の資格概要と試験内容

電気工事士は、第一種と第二種の2種類の区分があります。第一種が上位資格となるため、従事可能な工事の範囲が広くなることが特徴です。

  • 第一種電気工事士:一般用電気工作物と500kW未満の自家用電気工作物の工事に従事可能
  • 第二種電気工事士:一般用電気工作物の工事に従事可能

なお、電気工事士の試験内容については、下記を参考にしてください。

  • 試験日:(第一種)年1回・(第二種)年2回実施
  • 試験地:(第一種)筆記試験は東京など全13か所・実地試験は全12か所、(第二種)全国各地
  • 試験科目:筆記試験および技能試験
  • 受験料:(第一種)郵便申請11,300円・ネット申請10,900円、(第二種)郵便申請9,600円・ネット申請9,300円

電気工事士に関しても、受験資格はありません。第二種を受けてから第一種を受けても、いきなり第一種を受けてもいいでしょう。ただし、第一種は実務経験がないと試験に合格しても免状の申請ができませんので、注意してください。

5-5.そのほかの関連資格も知っておこう

電気設備に関連する資格としては、ほかにも電気工事施工管理技士や電気通信工事担任者などがあります。電気工事施工管理技士は、電気工事の実施に関する工事計画や施工図の作成が主な職務です。

また、電気通信工事担任者は、電気通信ネットワーク工事の施工や電子ネットワークの運用などにおける監督責任者としての職務があります。いずれの資格も、電気主任技術者や電気工事士とともに、取得しておいて損は無いと認識しておきましょう。

6.電気設備の点検・法定点検や資格に関するQ&A

では、電気設備の点検や法定点検・資格に関するよくある質問に回答します。それぞれの内容はとても役に立つので、必ず目を通しておいてください。

Q.電気設備を点検中に異常を発見した場合は届け出る必要がありますか?
A.電気設備を点検していると、ときには異常を発見することもあります。異常を発見したときは、早急に修理などの対応をしてください。さて、点検内容や対応に関して届け出の必要があるかという質問ですが、特に規定はありません。点検内容に関しては、記録を付ける必要はありますが届け出をする義務は無いと考えてください。ただし、異常があった部分に関しては正しく記録することと適切な対応を行うことを忘れないようにしましょう。

Q.電気設備の点検をスムーズに進めるためのアイデアはありますか?
A.電気設備の点検は、必要な事項をリスト化しておくことをおすすめします。また、点検の順番を決めておくことでスムーズに進めることができるでしょう。ただし、点検をスムーズに進めることだけに努力をするのはいけません。電気設備の点検は、電気設備を安全かつ確実に運用するために重要な意味を持ちます。あくまでも、作業の効率化のためのリスト化です。簡略化し過ぎて流れ作業のような点検にならないように気を付けましょう。

Q.電気主任技術者の資格は転職に有利になるのは本当ですか?
A.企業は、事業用の電気設備を必要とします。電気設備を持っていることで、保守点検を含めて電気設備に詳しい人材を求めるのは明らかです。電気主任技術者の資格取得者は、電気設備を含む電気関連に強いとの評価を受けるため、転職に有利になると言えます。また、電気美術主任者の資格を持っていることで有利な待遇での転職を期待できるでしょう。

Q.電気主任技術者や電気工事士の資格より実務経験が大切ではないですか?
A.確かに、実務経験は大切です。しかし、電気主任技術者や電気工事士の資格を持っていることは実務経験の裏付けにもなります。また、未経験者であっても資格取得に向けての学習をしたことや身に付けた知識は無駄になりません。経験者が資格を取得することは、今まで積んできた実務経験を裏付けるものとして転職時や再就職時に有利になります。いずれにしても、資格取得をすることは想像以上に評価されていると考えてください。

Q.電気主任技術者になるための効果的な学習方法はありますか?
A.電気主任技術者になるには、資格試験に合格する必要があります。電気主任技術者として身に付けるべき知識をまんべんなく学ぶとともに、実際の試験に近い形式で問題を繰り返し解くことも大切でしょう。たとえば、資格取得に特化した教材を使用するのもよい方法です。

まとめ

今回は、電気設備の点検・法定点検に関することを詳しく解説しました。記事を読み終えた今、当初に抱いていた疑問はスッキリ解決できたでしょうか。私たちの暮らしに快適さを提供してくれるのが電気設備です。電気設備を問題なく運用できるのも、定期的な点検をしているからに違いありません。電気設備の点検については、電気主任技術者や電気工事士などの国家資格が必要です。資格取得後は、仕事の幅が広がるほかにも転職の際に大きな武器となりますので資格取得を積極的に考えてみてくださいね。