
電気工事士の資格は本当に就職・転職に役立つの?
2016/09/26
2021/04/07
「電気工事士の資格を取得しても就職先はあるのか」「順調に仕事先が見つかるのか」など、先のことを考えると不安になる気持ち、よくわかります。資格を取得したほうが就職・転職に有利だとわかっていても不安ですよね。
そこで、電気工事士の就職や資格について、試験や取得のための勉強法など詳しく説明します。
この記事を読むことで、電気工事士の資格取得に必要な情報を得ることができます。電気工事士の就職について知りたい方・就職や転職を考えている方は必見です。
1.電気工事士について
電気工事の内容によっては資格取得者でしかできない作業があります。電気工事士は法令で決まっている作業ができる資格者のことです。それでは、一体どんな職務があるのでしょうか。
1‐1.電気工事士の職務
電気工事士の職務は電気工作物の工事です。事務所や商業・ホテル・ビル・工場・一般住宅・マンションなどにある自家用電気工作物または一般用電気工作物の工事を行います。
1‐2.電気工事士の種類・分類
電気工事士は第1種と第2種の二つに分かれています。第1種のほうが資格のレベルは高く、工事できる電気工作物も幅広いです。どんな仕事をしたいのか、どんな電気工作物を取り扱いのかによって、資格の種類が異なります。資格試験を受ける前に自分が受けるべき資格を明確にしておきましょう。
1‐3.電気工事士の目的・必要性
電気工事士は、電気工作物の電気工事に従事する際、電気設備技術基準に基づいて工事する資格です。電気に関係する工事は感電・火災など事故を起こすリスクが高まります。だからこそ、きちんと専門知識を持った有資格者が作業を行わなければなりません。
2.電気工事士の就職について
多くの方が気になっている、電気工事士の就職について説明します。電気工事士の主な就職先や平均年収・就職メリットなど一緒にチェックしていきましょう。
2‐1.電気工事士の魅力
電気工事士の魅力は資格者でしかできない工事ができることです。資格を持っていない人ではできない工事ができるため、職場では重宝されます。たとえば、第1種電気工事士はビルや大型商業施設などにある自家用電気工作物の工事ができる資格です。普段扱えない工事ができるため、自分自身のスキルアップにもつながるでしょう。
2‐2.電気工事士の主な就職先
電気工事士の主な就職先はビル管理会社や事業所・営業所、医療・福祉施設、電気工事を行う建設会社、大規模なイベント会場・施設の建築を運営する企業や電力会社などです。電気工事を受けつけている家電量販店・工務店も当てはまります。また、大手の電気工事会社・建築会社・電力会社・家電メーカーなどにも就職できる機会が訪れるでしょう。有資格者で実務経験が豊富な人ほど採用されやすい傾向があります。
2‐3.電気工事士の平均年収など
電気工事士の平均年収は500万円~です。一般サラリーマンの平均年収が400万円前後なので、全体の平均よりも上になります。また、実務経験が増えるほど任される仕事も大きくなり昇給アップが期待できるでしょう。600万円以上の年収を稼いでいる電気工事士も多いですよ。
2‐4.電気工事士の転職メリットとは
就職・転職に有利になるのが電気工事士の最大のメリットです。電気関連の資格を取得しておけば、無資格者よりも転職・就職しやすく、資格手当といった給料面での期待もできます。実際、電気工事士の資格を取得する方のほとんどが転職目的です。スキルアップしたい、転職に役立てたいために電気工事士の資格を取得します。
2‐5.電気工事士の求人について
電気工事士の求人は多いほうです。東京オリンピックの影響もあり、近年建築業界の需要が高まりつつあります。大型ショッピングモールやビルに必要な電気工事士の需要も向上しているのです。求人情報を見てみると、求める人材の多くに「資格を有する者」と記載されているのをよく見ます。資格者を欲しがっている会社が多い様子がわかるでしょう。
2‐6.電気工事士の注意点
やりたい仕事があっても資格の種類を間違っていた…まさに本末転倒です。間違わないためにも、第1種・第2種の違いをきちんと把握しておかなければなりません。第2種は一般住宅や店舗など600V以下で受電する設備工事に従事できます。一方、第1種は第2種の範囲+最大電力500kW未満の工場・ビルなどの工事に従事できる資格です。2種類の違いをきちんとチェックしておきましょう。
3.電気工事士の資格について
次に、電気工事士の資格についてもっと深く掘り下げていきたいと思います。就職・転職に必要で有利な資格から電気工事士の資格、実務経験などチェックしてください。
3‐1.就職や転職に必要・有利な資格とは
第1種・第2種電気工事士はどちらとも就職・転職に有利な資格です。持っているだけでも求人先からの需要が高まります。また、認定電気工事従事者や特種電気工事資格者(ネオン工事・非常用予備発電装置)といった資格も有利です。就職したい、入社したい会社の仕事内容に適した資格を取得しておくとスムーズに就職・転職できます。
3‐2.電気工事士の資格とは
第1種・第2種の電気工事士について、それぞれの資格でしかできない内容について詳しく触れていきたいと思います。二つの資格には一体どんな違いがあるのでしょうか。
3‐2‐1.第1種電気工事士
第1種電気工事士は第2種では従事できない「自家用電気工作物」の取り扱いができます。第2種よりも幅広い電気工作物の工事ができるため、スキルアップはもちろんのこと、給料面でも差がつくことになるでしょう。電気工事士の資格は第1種のほうが難易度は高くなります。電気工事士として働き続けたい方にはぜひ取得してほしい資格です。取得したほうが100%役に立ちます。
3‐2‐2.第2種電気工事士
第2種電気工事士ができる電気工事は、一般家屋や小規模商店など600V以下で受電する電気設備など一般用電気工作物が対象になります。自家用電気工作物の工事はできないので注意してください。一般用電気工作物の工事だけしたい方は第2種でいいでしょう。また、第1種を最初から受けるのには自信がない…という方も第2種から挑戦してみてください。
3‐3.実務経験について
第1種電気工事士の免状交付申請時には「実務経験証明書」を添付する必要があります。後ほど詳しく説明しますが、実務経験とは電気工事と認められる作業に努めた年数のことです。実務経験の対象になる電気工事は以下のとおりになります。
- 第2種電気工事免状または旧電気工事士免状取得後に行った一般用電気工作物の電気工事
- 認定電気工事従事者証取得後に行った簡易電気工事
- 事業用電気工作物のうち、電気事業の用に供する電気工作物または最大出力500kW以上の自家用電気工作物の設置・変更工事
- 経済産業大臣が指定する第2種電気工事士育成施設の教員として担当する第2種電気工事士養成に必要な実習
4.電気工事士の試験について
電気工事士の試験を受ける前に、受験資格や試験概要・試験内容・合格率など把握することが大切です。スムーズに試験を受けるためにも事前にチェックしておきましょう。
4‐1.受験資格
基本的には、電気工事士の資格試験に制限はありません。年齢制限もないので誰もが受験できる資格試験になります。ただし、第1級電気工事士に関しては、試験合格後の免状交付申請のときに実務経験が条件に入ってくるので注意してください。第1種電気工事士試験は電気工事の免状申請時の実務経験は5年必要です。もし、指定されている課程を修了している方は実務経験が3年になります。
電気工事士の免状の交付義務
4‐2.試験概要
電気工事士の申し込み方法や試験日・試験地・受験料について見ていきましょう。
4‐2‐1.申し込み方法
電気工事士の試験は「一般社団法人 電気技術者試験センター」が主催しています。申し込み方法はインターネットまたは郵送です。インターネット申し込みの場合、ホームページから受験申し込みをしてください。郵送の場合はゆうちょ銀行にて受験手数料とともに必要事項を記入した受験申込書を提出します。受験申込書はホームページや各地方のセンターなどで入手できるのでぜひチェックしてください。
一般社団法人 電気技術者試験センター
4‐2‐2.試験日
電気工事士の試験日は筆記試験・技能試験それぞれ異なります。第1種の場合、筆記試験が10月ごろ・技能試験が12月ごろです。第2種は上期と下期の2回にわかれています。上期の筆記試験は6月ごろ・技能試験は7月ごろです。下期の筆記試験は10月ごろ・技能試験は12月ごろになります。細かい日程は地方によって異なるため、センターのホームページで確認してください。
4‐2‐3.試験地
電気工事士の試験地は日本全国で行われます。地区選択の際は会場を間違えないように注意してくださいね。
4‐2‐4.受験料
受験料は申し込み方法と資格の種類によって異なります。できるだけ、費用を抑えたい方は数百円安くなるインターネット申し込みがおすすめですよ。
- 第1種…インターネット申し込み 10,900円/郵送申し込み 11,300円
- 第2種…インターネット申し込み 9,300円/郵送申し込み 9,600円
4‐3.試験内容
気になる試験内容は「筆記試験」と「技能試験」です。筆記試験ではマークシート形式で50問出題されます。50問のうち一般問題が30問・配線図問題が20問です。出題される問題内容は以下のとおりになります。
第1種
- 電気に関する基礎理論
- 配電理論および配線設計
- 電気応用
- 電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料および工具ならびに受電設備
- 電気工事の施工方法
- 自家用電気工作物の検査方法
- 配線図
- 発電施設・送電施設および変電施設の基礎的な構造および特性
- 一般用電気工作物および自家用電気工作物の保安に関する法令
第2種
- 電気に関する基礎理論
- 配電理論および配線設計
- 電気機器・配線器具ならびに電気工事用の材料および工具
- 電気工事の施工方法
- 一般用電気工作物の検査方法
- 配線図
- 一般用家電工作物の保安に関する法令
技能試験は作業用工具を使用して定められた時間内に配線図の問題を解きます。
4‐4.受験者数・合格率
平成27年度における第1種電気工事士の受験者数は19,815人でした。うち、合格者は12,434人です。第2種電気工事士の受験者数はおよそ95,398人で合格者はおよそ64,377人でした。第1種の合格率はおよそ63%・第2種の合格率はおよそ67%前後になります。合格率は年度によって多少の変動があります。
4‐5.問い合わせ先
電気工事士の試験に関してわからないことがあれば、一般社団法人 電気技術者試験センターに問い合わせしてください。電話または電子メールから問い合わせ可能です。
問い合わせページ
5.電気工事士資格合格後に必要な講習について
一般社団法人 電気工事技術講習センターでは第1種電気工事士定期講習が実施されています。第1種電気工事士は定期的に講習を受けなければなりません。定期講習の頻度は5年です。定期講習を受け続けることで、最新情報を取得しながらより安全・安心に電気工事ができます。
6.電気工事士に関してよくある質問
電気工事士に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。これから、電気工事士の資格を取得しようと考えている方はぜひチェックしてください。
6‐1.公務員として電気の仕事はできるのか?
電気工事士は国家資格でも公務員にはなれません。公務員として電気の仕事に就きたい場合は、公務員試験(電気系)を受けてください。電気工事士として働き、電気系の公務員に転職した方もいます。
6‐2.認定電気工事従事者とは?
電気工事士に関連する「認定電気工事従事者」は、第2種電気工事士が工場・ビルなど自家用電気工作物のうち、簡易電気工事を行うことができる資格です。簡易電気工事とは600V以下で使用する自家用電気工作物になります。
認定電気工事従事者講習詳細ページ
6‐3.特種電気工事資格者とは?
特種な分野の電気工事に従事できる有資格者が「特種電気工事資格者」です。特種電気工事資格者にはネオン工事と非常用予備発電装置工事の二種類があります。資格を取得するには、認定講習の受講とそれぞれ種類ごとに5年の実務経験が必要です。
ネオン工事詳細ページ/非常用予備発電装置工事詳細ページ
6‐4.電気工事士と電気主任技術者の違いは?
電気工事士は電気工事ができる資格です。電気主任技術者は第1種・第2種・第3種の三種類があり、主に変電設備など電気工作物の保守・管理業務を行います。また、電気主任技術者は第1種・第2種電気工事士の筆記試験が免除できる資格です。
6‐5.第2種電気工事士でも就職に役立つのか?
第2種電気工事士でも有資格者になるので就職・転職に役立ちます。電気工事の実務経験がない方は第2種から受けて経験を積み、第1種を受けるという流れが多いです。
まとめ
電気工事士の資格は電気工事に関する仕事に役立つものです。有資格者と無資格者ではまったく印象が異なります。電気工事を行う範囲によって第1種・第2種に分類されるので試験を受ける前に確認しておきましょう。転職・就職に役立てたい、スキルアップをしたい方は、ぜひ電気工事士の資格を取得してください。事前に電気工事士の資格について把握しておけば、上手に時間を使いながら勉強ができるでしょう。