電気の保安管理とは?電気管理技術者など関連する資格をご紹介

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電気を使う工作物・設備はきちんと専門知識を持っている人が扱わなければなりません。電気は感電・火災の恐れがあるため、知識を得ていない人が管理すると事故につながります。また、自家用電気工作物は工事・維持・運用が適切に行われることが法律で決められているのです。そのため、正しく安全に扱うには、‟電気の保安管理”について知らなければなりません。

そこで、本記事では電気の保安管理とは何なのか、電気管理技術者など関連する資格について詳しく説明します。

  1. 電気の保安管理とは
  2. 電気管理技術者について
  3. 電気管理技術者の資格のメリット
  4. 電気主任技術者の資格について
  5. 電気の保安管理と資格に関してよくある質問

この記事を読むことで、電気の保安管理を深く知ることができます。電気の保安管理について知りたい方はもちろんのこと、関連する資格を取得したい方は必見です。


1.電気の保安管理とは

安全・安心に電気設備を利用するには、「電気の保安管理」をきちんと理解することが大切です。電気の保安管理とは一体どんなものなのか、詳しく見ていきましょう。

1-1.準拠する法律

電気の保安管理を定めている法律は「電気事業法」です。電気事業法は昭和39年7月11日に施行されました。電気事業および電気工作物の保安の確保について定められている法律です。電気事業法に加え、電気用品安全法・電気工事士法・電気工事業法を総称して「電気保安四法」と呼ばれています。

1-2.保安管理の対象は

主に、保安管理の対象は受変電設備になるでしょう。電気を扱う設備は、電気事業法に基づいた取扱い・管理が必要不可欠になります。そのため、電気の保安管理をするには、電気事業法をしっかり把握しておかなければなりません。また、高圧受電設備などの自家用電気工作物などは、電気事業法によって保安規程を定めることが義務づけられています。保安規程だけでなく、電気主任技術者の選任が必要です。

1-3.保安管理の内容

保安管理は、電気設備の安全を守るために「点検」と「検査」を行います。責任者・使用者が定めた保安規程に従っての点検・検査を行うことで、不具合箇所の早期発見や予防保全につなげられるのです。

1-4.外部委託とは

電気設備の保安管理は、使用者が責任を持たなければなりません。しかし、選任すべき電気主任技術者が自社にいない場合、きちんと管理できる者がいないですよね。そこで、電気事業法の「保安管理業務外部委託承認制度」が適用されます。保安管理業務を外部へ委託する方法です。外部の委託先は、個人事業者か、または保安法人になります。

1-5.年次点検とは

保安管理業務の点検は、日常の巡視点検・定期点検があります。年次点検は定期点検の一種であり、1年に1回行う点検のことです。年次点検での注目ポイントは、「設備に対する異常の有無」になります。主に、非常用予備発電設備が正常に動作するかどうか、蓄電池設備が劣化していないかなどを調べる作業です。

2.電気管理技術者について

電気管理技術者は、電気の保安管理に携わる大切な役職です。一体、どんな役職になるのか、詳しくチェックしておきましょう。

2-1.資格概要

電気管理技術者は、自家用電気工作物の電気保安に関する業務を行う個人事業者を指しています。自家用電気工作物の所有者は、電気管理技術者との契約によって電気主任技術者の選任が電気事業法で義務づけられているのです。資格試験はありませんが、電気管理技術者になるには6つの要件を満たす必要があります。6つの要件は以下のとおりです。

  • 電気主任技術者免状の交付を受けていること
  • 第1種電気主任技術者は3年、2種は4年、3種は5年の実務経験があること
  • 継続器試験装置、絶縁耐力試験装置、高圧検電器など機械器具を持っていること
  • 保安管理業務を実施する事業場の種類および規模に応じて算定した値が告示未満であること
  • 保安管理業務の適確な遂行に支障をおよぼす恐れがないこと
  • 電気事業法第53条5項により、取り消しを受けた者で取り消しから2年を経過しない者でないこと

詳細は、東京電気管理技術者協会のホームページをご覧ください。
東京電気管理技術者協会

2-2.目的・必要性

事業者が設置する事業用(自家用含む)電気工作物の工事・維持・運用といった保安監督は、専門の知識を得た人だけができることです。電気管理技術者は電気の保安管理に関する知識を持っている証になります。正しい知識を得ているからこそ、設置者である所有者は電気管理技術者に任せられるのです。

2-3.職務

電気管理技術者の主な業務は、電気工作物の設置に関する審査やアドバイスから巡視・定期的に行う点検など幅広いです。トラブルが起きた際の応急処置や事故原因の調査・再発防止に対する対策も行います。

3.電気管理技術者の資格のメリット

電気工作物・設備に関する仕事に就く方は、電気管理技術者の資格を取得したほうがいいでしょう。それほど、電気管理技術者は役立つ資格です。では、一体どんなメリットがあるのでしょうか。

3-1.就職先

電気管理技術者はいわゆる自営業です。個人事業者を指しているため、所有者・事業所から委託を受けて電気の保安管理を行うことになります。専門の知識かつ実務経験がある資格になるので、所有者・事業所は安心して委託できるでしょう。「電気管理技術者」という肩書きだけでもメリットは大きいです。

3-2.求人

求人をチェックしてみると、電気管理技術者を募集している大手企業は多いです。無資格者よりも有資格者である電気管理技術者は、就職・転職に役立ちます。一生、この仕事をやっていきたいと考えている方は、ぜひ電気管理技術者を目指してください。

3-3.資格手当

資格を取得していると、「資格手当」が支給されます。資格手当とは、従業員が資格を取得した場合、または資格を取得しようとする場合に企業から支払われる手当のことです。会社・企業によって異なりますが、資格手当はおよそ3,000円~数万円になります。

3-4.年収

電気管理技術者の年収は、およそ700万~1,000万円です。開業した電気管理技術者の場合、1年目の収入は低いですが、3年目・5年目と軌道に乗り始めると収入が1,000万円以上にあがる可能性もあります。

4.電気主任技術者の資格について

それでは、電気主任技術者の資格について詳しく見ていきたいと思います。資格の取得を考えている方は、ぜひチェックしてください。

4-1.受験資格

通称「電験」と呼ばれている電気主任技術者は受験資格がありません。年齢・性別・学歴問わず、誰もが受験できる資格になります。

4-2.試験概要

第1種・第2種・第3種と全部で三種類あります。電験の試験概要について詳しく見ていきましょう。

4-2-1.試験地・試験日程

第1種・第2種の試験地は、札幌・仙台・東京・名古屋・石川・大阪・広島・高松・福岡・沖縄の10か所です。第3種は翌日に電気技術者試験センターの各支部(27か所ほど)で実施されています。試験日程は第一次試験と第二次試験にわかれており、第1種と第2種の一次試験が9月上旬ごろ、二次試験が11月下旬ごろです。第3種は一次試験だけで、9月上旬ごろ実施されます。
試験日程ページ

4-2-2.申込方法

申込方法は「インターネット申込」か、または「郵送申込」になります。インターネット申し込みの場合、ホームページから申し込みをしてください。そして、受験料を銀行振込・クレジットカード決済・コンビニエンスストア・ペイジー決済のいずれかを選択して支払います。郵送の場合は、ゆうちょ銀行で受験案内・申込書に含まれている「払込取扱票」と受験手数料を一緒に窓口へ提出する方法です。受験案内・申請書の配布状況は、電気技術者試験センターで確認してください。
電気技術者試験センター

4-2-3.受験料

受験料は資格の種類と申込方法によって異なります。

  • 第1種:インターネット申し込み 12,400円/郵送申し込み 12,800円
  • 第2種:インターネット申し込み 12,400円/郵送申し込み 12,800円
  • 第3種:インターネット申し込み 4,850円/郵送申し込み 5,200円

4-3.試験内容

試験内容は一次試験が4科目でマークシート方式、二次試験が2科目で記述方式になります。出題範囲は以下のとおりです。

一次試験

  • 理論:電気理論・電子理論・電気計測および電子計測
  • 電力:発電所および変電所の設計および運転・送電線路および配電線路の設計・運用・電気材料
  • 機械:電気機器・パワーエレクトロニクス・電動機応用・照明・電熱電気化学・電気加工・自動制御・メカトロニクスならびに電力システムに関する情報伝送および処理
  • 法規:電気法規および電気施設管理

二次試験

  • 電力・管理:発電所および変電所の設計および運転・送電線路および配電線路の設計・運用・電気施設管理
  • 機械・制御:電気機器・パワーエレクトロニクス・自動制御およびメカトロニクス

4-4.難易度・合格率

国家資格の一つである「電気主任技術者」の難易度は「やや難しい」から「普通」です。近年の合格率を見てみると、第1種・第2種ともに2~4%前後、第3種は10%前後になっています。合格率を見るだけで難しい試験だとわかるでしょう。

4-5.勉強法・学習のコツ

合格率が低い試験なので、毎日コツコツと勉強する必要があります。しかし、仕事と勉強の両立は思っているより大変です。スクールに通うのも一つの方法ですが、受講日程が決まっているので仕事の都合で参加できなくなる日もあるでしょう。また、独学は自分で分からないところを解消しなければなりません。

5.電気の保安管理と資格に関してよくある質問

電気の保安管理と資格に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.電気保安協会とは?
A.日本国内に10か所ある一般財団法人電気保安協会です。主に、電気設備の安全点検や企業向け電気設備保安・監視などを行っています。

Q.電気の保安管理をしないとどうなるのか?
A.電気設備の不具合やトラブルが起こりやすくなります。また、法的にも罰則の適用対象になるでしょう。事故が起きた際の全責任は、電気設備の設置者の責任者にかかります。

Q.保安規程の記載事項とは?
A.保安規程は、電気設備の安全確保に関する具体的な事項を記載します。たとえば、保安に関する業務の運営管理体制・保安教育・工事の計画および実施・保守・災害対策などです。

Q.電気設備の技術基準とは?
A.発電用設備・原動機などの電気工作物をのぞく電気工作物の技術基準です。電気設備を設計・施工するための最低限ルールが記載されています。

Q.電気主任技術者の認定とは?
A.法律に定められた学歴と実務経験を満たすと、国家試験を受けることなく免状が取得できる認定制度です。認定制度に関しては、日本電気技術者協会のホームページをご覧ください。

まとめ

電気の保安管理は、電気工作物の点検・保安を行う大切な作業です。大事故・大けがにつながる電気設備だからこそ、専門知識を持った有資格者が正しく管理していかなければなりません。専門知識を習得するためにも、資格取得に向けての勉強を始めましょう。特に、専門学校でも推進されている電気主任技術者は社会的評価が得られる資格です。合格率は低いですが、毎日勉強を続けていけば取得できます。専門知識を習得して、電気主任技術者の経験を積んでいきましょう。