ゼロから分かる!燃料電池の仕組み〜電験3種受験の基本のキ

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こちらでは、電験3種の受験者、あるいは受験を検討している方に向けて“燃料電池の仕組み”を解説しています。勉強を始めたばかりの方でも理解できるよう、中学理科の知識があればだいたい理解できるように記述しました。

まずは興味を持つことが試験へのモチベーションを高める第一歩ですから、とりあえず“燃料電池がどういうものか知りたい”という意欲を持って読み進んで頂ければ幸いです。

  1. 燃料電池の仕組みを解説!
  2. 主な燃料電池の種類を紹介!
  3. 燃料電池のメリット・デメリットを考える!

1.燃料電池の仕組みを解説!

燃料電池は、化学反応を利用して電気を生み出す電池のことです。

一般の発電装置は、タービンを回転させることで(=物理的な力によって)電力を生み出しています。簡単に言うなら、“電池を使ってモーターを回転させる”という方法の逆です。例えば、モーターの回転軸を手で回すと、モーターの電極から電気が流れます。これを大がかりに行うと、発電所になると考えてください。

電気を使って軸を回転させる装置はモーターと呼びますが、構造は同じでも、軸を回転させて電気を生み出す場合は発電機と呼んでいます。火を使ってタービンを回せば火力発電、風車の回転で回せば風力発電、核のエネルギーで回せば原子力発電です。自転車を漕ぐと電球がつく…という装置は、ペダルを漕ぐ動きで発電機を回しています。

さて、燃料電池は物理的にタービンを回すのではありません。化学反応のエネルギーを電力に変換する装置です。

もっとも普及している燃料電池の仕組みは“水の電気分解の逆反応”を用います。ほとんどの方は中学校の時に、水に電気を流して酸素+水素を取り出す実験をしたことがあるはずです。水+電気→酸素+水素という反応の逆を行えば、酸素+水素→水+電気となり、電気を生み出すことができます。これが燃料電池の原理です。

つまり、化学反応で(物理的な力を使わずに)酸素と水素を反応させれば、電気を生み出すことができる…ということになります。

1-1.触媒という言葉を理解しましょう!

触媒というのは、“化学反応の速度を速めるが、それ自体は反応によって変化しない物質”を指します。分かりづらいと思うので、例を挙げましょう。

世界で初めて発見された触媒は、酸素と水素の燃焼反応を助ける触媒-白金(プラチナ)です。水素は火をつけると燃焼し、空気中の酸素と結びついて水になります。しかし、水素を白金に吹きつければ、温度を上げなくても発火するのです。白金が触媒として“水素の燃焼による酸化”という化学反応を促進している…ということになります。この時、酸素と水素は水に変わっていますが、白金は白金のままです。量が減ることもありません。

触媒というのは、まさにこういうことです。白金が酸素と水素の燃焼反応を促進しましたが、白金自体は何の影響も受けませんでした。こういう状況を指して、“白金が触媒の役割を果たしている”と表現します。

もちろん、酸素+水素→水+電気になりますから、この反応が起きた時、電気が生まれているはずです。

2.主な燃料電池の種類を紹介!

すでに燃料電池は実用化されています。ここでは、燃料電池の主な種類、仕組みを解説することにしましょう。

2-1.固体高分子形(PEFC)

ここまで解説したとおり、水素を酸素と反応させ、燃焼させることで電気を生み出す燃料電池です。運転の際、温度は80〜100℃になります。高温に感じるかもしれませんが、燃料電池としては低温の部類です。

周囲に危険が及ぶような高温にならず、小型化しやすいことから、家庭用電源・電気自動車・携帯端末に使用する方向で研究されています。

ただ、発電効率が悪く、さらに触媒に白金を使用することからコスト面が課題になるでしょう。燃料に一酸化炭素が混じっていると触媒の白金が劣化する…という問題もあり、“私たちの生活の中で当たり前のように使用する”というレベルまで持っていくのは容易ではありません。

2-2.リン酸形(PAFC)

こちらも、水素と酸素を反応させる仕組みです。運転する際の温度は190〜200℃とやや高温になります。

発電効率はPEFCより良いのですが、大型なので家庭用電源には向きません。ビル・工場などに据え付ける定置発電の用途が想定されています。実際、すでに緊急電源として配備実績があり、40,000時間以上にわたって稼働し続けるなど有望な結果を出している燃料電池です。

ただ、触媒が白金であることからコスト面の課題があり、また、PEFCと同様に燃料に一酸化炭素が混じると触媒が劣化する…という弱点を抱えています。

2-3.固体酸化物形(SOFC)

上記の2つは水素イオンを酸素と反応させる化学反応を用いていますが、SOFCは酸化物イオンを水素または一酸化炭素と反応させる手法を用います。

発電効率が非常に良く、出力も高いのですが、運転時の温度が600〜1000℃に達するのが特徴。非常に高温になるため、耐久性・強度を維持するのが難しい…という課題があります。

触媒が不要で、燃料に一酸化炭素が混じっていても構わないので石炭ガス・天然ガスを燃料に使うことが可能です。将来的には火力発電に取って代わる可能性もあるのではないか…と大きな期待が寄せられています。

2-4.その他の燃料電池

上記のほか、溶融炭酸塩形(MCFC)、バイオ燃料電池などさまざまな種類の燃料電池が存在しています。今回は国内で実用化が進められつつある3種類に絞りましたが、勉強が進んだら、ほかの燃料電池についてもぜひ、調べてみてください。

3.燃料電池のメリット・デメリットを考える!

燃料電池は“主に排出するのが水だけ”という性質を持っているので、環境への悪影響がありません。温室効果ガスを一切排出しないので、非常にエコな発電方法といえます。タービンを使用しないので騒音がなく、街中で発電可能であることも大きなメリットと言えるでしょう。

もちろん、現状ではデメリットも存在しており、特にコストの高さは大きな問題です。永久に使えるわけではなく、10年程度で寿命を迎えますから、初期投資に見合った働きをするかどうか…というのが課題になっています。

まとめ

以上、燃料電池に関する基礎知識でした!

  1. 燃料電池の仕組みを解説!
  2. 主な燃料電池の種類を紹介!
  3. 燃料電池のメリット・デメリットを考える!

電験3種は学歴による受験資格の制限もなく、努力次第で誰でも取得できるのが魅力です。ぜひ、こういった基礎知識を頭に入れ、本格的な勉強をスタートさせてくださいね!