電気主任技術者の代務者とは?不在時の役割・指名の考え方を解説
2019/02/25
2026/06/10
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督を担う重要な存在です。
しかし、電気主任技術者が休暇や出張などで一時的に不在になることもあります。そのようなとき、現場で誰が連絡を受け、どのように対応するのかを決めておかないと、保安管理に空白が生じるおそれがあります。
そこで重要になるのが、電気主任技術者の不在時に業務を代行する「代務者」です。
ただし、代務者は、電気事業法上の「主任技術者の選任」と同じ意味ではありません。多くの場合、保安規程や社内体制の中で、主任技術者不在時の連絡・確認・初動対応を行う人として、あらかじめ指名しておくものです。
この記事では、電気主任技術者の役割、代務者が必要になる場面、代務者に求められる知識や経験、資格取得の概要、確認しておきたい注意点を解説します。
1.電気主任技術者とは
まずは、電気主任技術者の基本的な役割と、どのような事業場で必要になるのかを整理しておきましょう。
電気設備の保安監督を行う専門資格
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督を行うための国家資格です。
発電所、変電所、工場、ビル、商業施設など、一定規模以上の電気設備を持つ事業場では、電気設備を安全に使い続けるための保安管理が欠かせません。
電気主任技術者は、点検、工事の確認、異常時の対応、保安教育、記録管理などに関わり、電気事故を防ぐための中心的な役割を担います。
第一種・第二種・第三種で扱える範囲が違う
電気主任技術者には、第一種、第二種、第三種があります。
- 第一種:すべての事業用電気工作物
- 第二種:電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
- 第三種:電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物。ただし、一定規模以上の発電所などは除かれる
どの免状が必要になるかは、設備の電圧や種類、発電所の出力などによって変わります。
事業場で電気主任技術者を選任する場合は、設備の内容に合った免状を持つ人を選ぶ必要があります。
事業用電気工作物では選任が必要
事業用電気工作物を設置する者は、電気工作物の工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任する必要があります。
選任後は、所定の手続きに従って届出を行います。
ただし、一定の要件を満たす自家用電気工作物では、保安管理業務を外部委託できる制度もあります。自社で主任技術者を選任するのか、外部委託制度を利用するのかは、設備の規模や条件に応じて確認が必要です。
電気主任技術者は、単なる資格者ではなく、事業場の電気保安を支える責任ある立場です。
2.電気主任技術者の代務者とは
代務者とは、電気主任技術者が不在のときに、その業務の一部を代行する人を指します。
主任技術者不在時の代行者
電気主任技術者が休暇、出張、研修、外出などで一時的に現場を離れることがあります。
その間に異常が発生したり、点検や工事に関する確認が必要になったりした場合、誰が初動対応を行うのかを決めておく必要があります。
このような場面に備えて、主任技術者不在時に業務を代行する者として指名されるのが代務者です。
正式な主任技術者の選任とは異なる
代務者は、電気事業法上の「電気主任技術者として選任される人」と同じ扱いではありません。
正式な主任技術者は、設置者が選任し、必要な届出を行う対象です。一方、代務者は、保安規程や社内の保安体制に基づいて、主任技術者不在時の対応者としてあらかじめ指名しておくものです。
そのため、「代務者を選任すれば主任技術者の代わりになる」と考えるのは適切ではありません。
保安規程で役割を明確にしておく
代務者を置く場合は、保安規程や社内ルールの中で、どの範囲の業務を代行するのかを明確にしておくことが大切です。
たとえば、異常時の連絡、簡易な確認、記録、関係者への報告、主任技術者への連絡方法などを決めておくと、現場で迷いにくくなります。
代務者の役割が曖昧なままだと、異常時に判断が遅れたり、主任技術者へ連絡すべき内容が伝わらなかったりするおそれがあります。
3.代務者に求められる知識と確認事項
代務者には、必ずしも電気主任技術者免状が必要と明記されているわけではありません。ただし、実際に業務を代行する以上、一定の知識や経験は必要です。
電気設備の基礎知識
代務者は、事業場の電気設備について基本的な知識を持っていることが望ましいです。
受電設備、分電盤、遮断器、保護装置、非常用電源、主要な負荷設備など、どこに何があるのかを把握しておく必要があります。
また、異常表示、警報、停電、漏電、過熱、異音、異臭などが発生したときに、どのように報告するかも理解しておきましょう。
主任技術者への連絡体制
代務者にとって重要なのは、自己判断で対応しすぎないことです。
異常が発生した場合は、主任技術者へ速やかに連絡し、指示を受ける体制を整えておく必要があります。
連絡先、連絡手段、休日や夜間の対応、緊急時の連絡順序を事前に決めておくと、いざというときに動きやすくなります。
対応できる範囲とできない範囲
代務者が対応できる範囲は、事業場の保安規程や主任技術者の指示によって整理しておく必要があります。
たとえば、異常箇所の確認、関係部署への連絡、記録、立入制限などは代務者が対応できる場合があります。
一方で、高度な判断を伴う操作、工事の保安確認、設備停止の判断、復旧手順の決定などは、主任技術者や責任者の指示を受けるべき場面が多くなります。
代務者を指名するときは、「何を任せるか」だけでなく、「どこから先は主任技術者へ確認するか」も決めておきましょう。
4.電気主任技術者の資格取得方法
代務者として業務に関わる場合、将来的に電気主任技術者免状の取得を目指すことも選択肢になります。ここでは、資格取得方法の概要を紹介します。
試験で取得する方法
電気主任技術者免状を取得する代表的な方法は、電気主任技術者試験に合格することです。
電気主任技術者試験には、第一種、第二種、第三種があります。受験資格はなく、学歴や実務経験に関係なく受験できます。
第三種は、理論、電力、機械、法規の4科目で実施されます。現在は、筆記方式だけでなくCBT方式も導入されています。
第一種・第二種は一次試験と二次試験がある
第一種・第二種電気主任技術者試験は、一次試験と二次試験に分かれています。
一次試験は、理論、電力、機械、法規の4科目です。二次試験は、電力・管理、機械・制御の2科目です。
二次試験は記述式のため、計算力だけでなく、考え方を文章で説明する力も求められます。
第三種は上期・下期で実施される
以前は第三種電気主任技術者試験も年1回でしたが、現在は上期・下期で実施されています。
試験方式には、CBT方式と筆記方式があります。受験日程や申込期間、受験手数料は年度によって変わるため、最新情報は電気技術者試験センターの案内で確認しましょう。
古い記事に掲載されている2019年度の日程や受験料は、現在の情報としては使わないほうが安全です。
科目別合格制度を活用できる
電気主任技術者試験には、科目別合格制度があります。
第三種では、4科目のうち一部の科目に合格した場合、申請により一定期間その科目の試験が免除されます。
第一種・第二種でも、一次試験について科目別合格制度があります。ただし、二次試験には科目別合格制度はありません。
一度で全科目に合格できなくても、制度を活用して計画的に合格を目指せます。
認定による取得方法もある
電気主任技術者免状は、試験合格だけでなく、所定の学歴や実務経験などの条件を満たして申請する方法もあります。
いわゆる認定取得と呼ばれる方法で、必要な条件は免状の種類や学歴、実務経験によって異なります。
認定取得を検討する場合は、自己判断せず、所管の産業保安監督部などで最新の条件を確認しましょう。
5.代務者を指名するときの注意点
代務者は、名前だけ決めておけばよいものではありません。実際に不在時の対応ができるよう、体制として整えておくことが重要です。
保安規程との整合性を確認する
代務者の扱いは、保安規程や事業場の保安管理体制と整合している必要があります。
主任技術者の不在時に誰がどの業務を行うのか、どのように主任技術者へ報告するのかを確認しましょう。
保安規程を変更する必要がある場合は、所定の手続きも確認してください。
複数人を指名する場合は順序を決める
代務者は1人だけでなく、複数人を指名しておくことも考えられます。
ただし、複数人を置く場合は、誰が第一対応者なのか、誰が補助に入るのか、休日や夜間は誰に連絡するのかを決めておく必要があります。
複数人いるのに役割が曖昧だと、かえって対応が遅れることがあります。
教育と訓練を行う
代務者には、必要な教育や訓練を行いましょう。
設備の配置、緊急連絡先、異常時の報告内容、立入禁止措置、記録の取り方などを確認しておくと、実際の場面で落ち着いて対応しやすくなります。
年に一度など、定期的に体制を見直すことも大切です。
資格取得を強制条件にしない
代務者には、電気主任技術者免状を持つ人を指名できれば安心です。
しかし、必ず有資格者でなければ代務者になれないと決めつけると、実際の体制づくりが難しくなる場合があります。
重要なのは、事業場の保安管理に必要な知識・経験を持ち、主任技術者と連携して適切に対応できることです。
代務者は「主任技術者の代わりにすべてを判断する人」ではなく、「不在時の保安体制を途切れさせないための連絡・初動対応の担い手」と考えると整理しやすくなります。
6.電気主任技術者の代務者でよくある質問
電気主任技術者の代務者について、よくある疑問をまとめました。
代務者には電気主任技術者免状が必要ですか?
代務者は、電気事業法上の主任技術者として選任される人とは異なります。
そのため、代務者という立場だけで必ず電気主任技術者免状が必要と整理するのは適切ではありません。ただし、実際に主任技術者不在時の業務を代行するため、電気設備や保安管理に関する知識・経験は必要です。
代務者は何をする人ですか?
主任技術者が不在のときに、あらかじめ決められた範囲で業務を代行する人です。
具体的には、異常時の連絡、現場確認、関係者への報告、記録、主任技術者への連絡などが考えられます。どこまで対応するかは、保安規程や社内ルールで整理しておきましょう。
代務者を複数人指名してもよいですか?
複数人を指名することは考えられます。
ただし、第一対応者、補助者、休日・夜間の連絡先などを明確にしておかないと、緊急時に判断が遅れることがあります。人数よりも、役割分担と連絡体制が重要です。
代務者を置けば主任技術者が不在でも問題ありませんか?
代務者を置いていても、主任技術者の責任や選任義務がなくなるわけではありません。
代務者はあくまで不在時の代行者です。主任技術者と連絡が取れる体制を確保し、重要な判断は主任技術者や責任者の指示を受けるようにしましょう。
電気主任技術者試験は今も年1回ですか?
第一種・第二種は一次試験と二次試験が実施されます。
第三種は制度変更により、上期・下期で実施され、CBT方式と筆記方式があります。年度によって日程や申込期間が変わるため、最新情報は電気技術者試験センターの案内を確認してください。
まとめ
電気主任技術者は、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安監督を担う重要な資格者です。
主任技術者が休暇や出張などで一時的に不在になる場合に備え、保安規程や社内体制の中で代務者をあらかじめ指名しておくことがあります。
代務者は、正式な主任技術者の選任とは異なります。主任技術者の代わりにすべてを判断する人ではなく、不在時の連絡や初動対応を担い、保安体制を途切れさせないための役割と考えると分かりやすいでしょう。
代務者には必ずしも電気主任技術者免状が必要と断定できるわけではありません。ただし、設備の状況を理解し、異常時に適切な連絡・報告ができる知識と経験は必要です。
また、電気主任技術者試験の制度は変更されています。特に第三種は上期・下期で実施され、CBT方式も導入されています。古い試験日程や受験料をそのまま掲載せず、最新情報は電気技術者試験センターで確認する形にしておくと安心です。
代務者を指名するときは、保安規程との整合性、役割分担、主任技術者への連絡体制、教育・訓練まで確認し、実際に機能する保安体制を整えておきましょう。




