電気主任技術者の責任範囲はどのくらい? 仕事内容と共に解説します!

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電気主任技術者とは、オフィスビルや商業施設・工場・発電所などに設置されている受電設備や配線設備などの保安監督業務を行うことのできる資格です。高電圧の電気を受電・配電・変電する設備を事業用電気工作物と言い、電気主任技術者による定期的な点検が義務づけられています。需要が高く転職にも有利なので、幅広い年代の方が取得を目指している資格です。

今回は、電気主任技術者の責任範囲について解説しましょう。

  1. 電気主任技術者の職務について
  2. 電気主任技術者の責任範囲について
  3. 電気主任技術者の資格について
  4. 電気主任技術者の責任範囲に対するよくある質問

この記事を読めば、電気主任技術者の仕事内容についてもよく分かります。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひ読んでみてくださいね。


1.電気主任技術者の職務について

工場やビル・大規模商業施設など多量に電力を使う施設に設置されている設備を事業用電気工作物と言います。事業用電気工作物は、電気事業法や電気事業法施行規則によって定期的に自主点検を行うように定められており、この自主点検を行うことのできる資格が電気主任技術者です。いくら電気設備に詳しい方が点検をしても、有資格者が点検を行わなければ基本的に自主点検とは認められません。

事業用電気工作物を設置してある設備は、日本全国にたくさんあります。電気主任技術者の職務は、それらの電気設備を安全に使い続けられるための重要なものです。

有資格者は、事業用電気工作物を設置している会社が直接有資格者を雇用することもあれば、事業用電気工作物の保守管理を行う会社に就職し、各設置場所に派遣されることもあります。

なお、事業用電気工作物を設置している施設の所有者が、保安監督業務を行う電気主任技術者を選任した場合は、遅滞なく最寄りの産業保安監督部に必要書類を届け出なければなりません。

2.電気主任技術者の責任範囲について

この項では、電気主任技術者の職務における責任範囲を解説します。どのような事故が起きた場合、責任が問われるのでしょうか?

2-1.事業用電気工作物で発生する可能性がある事故とは?

事業用電気工作物では、以下のような事故が発生する可能性があります。

  • 事業用電気工作物の工事中の感電事故
  • 事業用電気工作物の操作ミスによる事故
  • 事業用電気工作物の劣化や工事ミスが原因の事故
  • 事業用電気工作物の保安点検不足が原因の事故

このような事故が発生すれば、事業用電気工作物を設置している場所だけでなく近隣の施設にまで火災や停電の危険があるでしょう。パソコンのような精密機械は停電をしただけで、壊れる可能性もあります。ですから、事業用電気工作物が故障した場合、金額的にも多大な被害が出ることも珍しくありません。

2-2.事業用電気工作物が故障した場合の責任の所在とは?

事業用電気工作物の保安監督責任者は、電気主任技術者です。とはいえ、事業用電気工作物の故障すべてが電気主任技術者の責任ではありません。たとえば、電気工作物を工事している最中の事故は、工事監督者(電気施工管理技士など)に責任があります。また、操作ミスによる責任は工作物を設置している事業所にあるのです。

2-3.電気主任技術者が責任を負わなければならない事故とは?

事業用電気工作物の事故の原因が、保安点検業務の不備による場合は、電気主任技術者の責任となります。一例をあげると

  • 定期的な点検を怠った結果、事故が発生した。
  • 定期点検で不備を見つけたが、故意に報告をしなかった結果事故が発生した。

このような場合は、責任を問われることもあるでしょう。また、電気主任技術者の名義貸しも法律で禁止されていますので、発覚すれば責任が問われ、免状の返納命令が下されることもあります。

点検をしたけれども不備が発見できず、その結果事故が起こった場合や、不備を見つけ報告したにもかかわらず、設置者が対策を怠った結果事故が起こった場合は、責任が問われることはありません。

2-4.不慮の事故に備えてやっておくべきこと

電気主任技術者として働く場合は、必ず点検した結果を書類として残しておきましょう。点検をした項目とその結果を記載し、施設の責任者に確認印を押してもらった書類があれば、事故が発生した場合に責任の所在を押し付け合うこともなくなります。

事業用電気工作物で事故が発生した場合、労働基準監督署や消防・警察などから事情を聞かれることもあるでしょう。このようなときも点検の結果を記録した書類があれば、スムーズに事が運びますし、原因の究明にも役立ちます。

3.電気主任技術者の資格について

この項では、電気主任技術者の資格を取得するメリットや資格取得の方法を解説します。ぜひ参考にしてくださいね。

3-1.電気主任技術者の資格を取得するメリット

電気主任技術者の資格は、試験に合格すれば取得できますが、受験資格が特に定められていません。そのため、全く畑違いの分野で働いていた人でも試験に合格すれば、取得が可能です。前述したとおり電気主任技術者を求めている職場はたくさんあるため、就職や転職に大変有利となるでしょう。また、資格を取得して一定期間実務経験を積めば、独立も可能です。

3-2.電気主任技術者の種類と資格取得方法

電気主任技術者は、第1種・第2種・第3種の三種類があります。資格の中には最高位のものを取得しなければ就職や転職に役立たないものもありますが、電気主任技術者の場合は第3種でも高い需要があるのです。また、電気主任技術者には認定を受けて資格を取得する方法もあり、第三種を取得して実務経験を積めば、第1種や第2種を認定で取得できるチャンスがあります。

電気主任技術者の試験は難易度が高く、第3種では工業高校電気科修了程度、第2種は電気関係の専門学校を修了した程度、第1種は大学の工学部・電気科を修了した程度の知識が必要です。ですから、何も資格や知識がない状態で電気主任技術者の試験にチャレンジしたい場合は、まず第3種の合格を目指しましょう。

3-3.試験の特徴

電気主任技術者の試験は、電気技術者試験センターが主催しています。第3種は、理論・電力・機械・法規の4科目を3年以内に合格すれば試験合格です。第2種・第1種は、この4科目の試験に合格した後、「電力・管理」と「機械・制御」の二次試験を受け、合格すれば取得ができます。3年がかりで4科目合格して資格を取得する方も珍しくありません。

試験には公式を使った計算問題が多く出題されるため、電気だけでなく数学の知識やセンスも必要です。試験は年々難しくなっている傾向にあり、合格率がすべての種で10%以下の年もあります。

なお、試験は1科目につき6割以上の得点で合格ですが、平均点が低い年は6割未満でも合格になることもあるでしょう。

3-4.試験の申し込み方法や勉強のコツ

電気主任技術者の試験は、年に一度電気技術者試験センターの主催で行われており、ホームページから電子申請で申し込みが可能です。人気資格のため、書店やインターネット通販でもたくさんの参考書が販売されています。独学でも可能ですが、電気の知識が全くない方が独学で合格をつかみ取ることは、かなり難しいでしょう。

4.電気主任技術者の責任範囲に対するよくある質問

Q.電気主任技術者の名義貸しとはどのようなものですか?
A.前述したように、電気主任技術者を事業用電気工作物の保安監督者として選任した場合、産業保安監督部に届け出が必要になります。この際、実際には常駐していなかったり委託契約を結んでいなかったりする有資格者の名前を書いて提出することが、名義貸しです。点検や保安の不備で事故が起こった場合、名義を貸した電気主任技術者の責任が問われますし、名義を貸すこと自体が違法になります。

Q.電気主任技術者は、すべての事故の責任を負わなくてもよいのでしょうか?
A.もちろんです。保安監督業務に不備があり、それを知りつつ対策を取らなかったために事故が起こった場合のみ、責任が問われます。

Q.責任を問われると免許取り消しなどはありえるのですか?
A.悪質な場合は、取り消しもあるでしょう。

Q.電気主任技術者の仕事は性別に関係なく務まりますか?
A.もちろんです。女性の電気主任技術者も増加しています。最近では、太陽光発電所の第2種電気主任技術者を女性が担当しているケースもできています。

Q.本来なら責任を負わなくてもよい案件なのに、電気主任技術者だから責任があると言われました。どうしたらよいでしょうか?
A.最寄りの労働基準監督署にすぐに相談してください。

おわりに

今回は電気主任技術者の責任範囲について解説しました。主任技術者ですから、有資格者は転職や就職したばかりでも、重い責任がある地位を任せられることもあります。ただし、電気工作物の故障に対する責任をすべて負う必要はありません。事故が発生したら安全管理者と共に原因を突き止め、安全対策を練りましょう。