電気主任技術者の選任要件とは?どんなところに必要なの?
2015/11/18
2019/03/18
電気主任技術者とは、事業用の電気工作物の工事や維持管理・保安を行うための資格です。一定の電圧を使う事業所は電気主任技術者を選任する必要があります。では、いったいどのような場所で選任が必要なのでしょうか?
そこで、今回は電気主任技術者の選任要件についてご説明します。一般家庭以外ならばどのような規模の事業所でも電気技術者の選任が必要なのでしょうか?
また、電気主任技術者の代わりを務められる資格などもご紹介します。電気主任技術者の資格取得を目指している方も、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。
1.電気主任技術者の選任が必要な場所は?
電気主任技術者の選任が必要な場所は、原則、一般家庭以外で電気を使うところです。店舗や不特定多数の人が出入りする施設・工場・発電所や変電所などは一般家庭よりも高い電圧で電気を使います。
また、工場などは危険物や爆発物などを取り扱っているところもあり、電気の保安をしっかりしておかないと火災になることもあるでしょう。さらに、不特定多数の人が出入りしている施設は、電気設備が故障すると業務に支障が出るだけでなく、利用者が施設内に閉じこめられたり危険な目にあったりすることもあります。また、電気設備が故障したときに素早く修理する人も必要です。
2.電気主任技術者の選任が免除されている施設は?
この項では、電気主任技術者の選任が免除されている施設の条件をご紹介します。言い換えれば、この条件に当てはまらない事業所は電気主任技術者を選任しなければならないということです。
2-1.最大電力が100KW未満の事業所
最大電力が100KW 未満の事業所の場合は、第二種電気工事士の資格保持者や高専以上の学歴と電気の知識がある方が保安や管理を行えます。ただし、100KW未満というのはかなり小さい事業所ですから、工場などは当てはまらないことが多いでしょう。
2-2.最大電力が500KW未満の事業所
こちらの事業所は、第一種電気工事士の資格保持者ならびに、高圧電気工事技術者の資格保持者が保安や管理を行えます。また、認定校となっている新制工業高校の電気科を卒業した以上の学歴を持った人でも、電気主任技術者の代わりが務まるでしょう。
2-3.供給電圧が7000V以下で出力1000KW未満の発電所・発電機
ただし、電圧や出力の条件は満たしていても、施設の外にまで電線が伸びているような施設(外部に電気を供給しているということ)は選任が必要です。それ以外の設備ならば、電気保安協会・電気管理技術者協会に属する管理技術者に管理を委託することができます。
3.電気主任技術者の選任要件は?
電気主任技術者は、1種・2種・3種まであります。1種はすべての電気工作物を扱えますが、2種と3種は扱える電圧が異なります。
また、第3種は、電圧が5万V未満の電気工作物(出力5,000KW以上の発電所を除く)の保安や維持管理ができます。第2種は17万V未満の電気工作物まで取り扱えます。ですから、電気主任技術者を選任したい場合は、施設の電圧を確かめてから求人を出しましょう。第2種・第3種の電気主任技術者が扱える以上の電圧の設備を持っている施設の保安業務をしてしまうと違法になります。
4.電気主任技術者の仕事内容は?
では、電気主任技術者を選任した場合、どのような仕事を任せられるのでしょうか? この項ではその一例をご紹介します。
4-1.電気設備の保安や点検
高い電圧を使う設備ほど、電気設備の保安は大切です。特に、古い施設ほど電気の設備も老朽化してきますから、保守点検を忘れると故障しやすくなるでしょう。
また、高層ビルの電気設備が故障した場合、照明だけでなく空調も使えなくなります。つまり、ビルそのものが使用不可能になってしまうのです。ですから、何の異常がなくても毎日の点検が必要になります。
4-2.電気設備の修理
しかし、電気設備がいきなり故障する可能性もあります。大きな故障の場合は施設の使用を中止しなくてはなりませんが、小さな故障はその場で電気主任技術者が修理をすることもあるのです。
特に、24時間稼働している施設の場合は、故障も24時間起こります。ですから、電気主任技術者も24時間体制で管理室につめていることもあるのです。
また、小さいビルの場合は、蛍光灯の取り換えなども行ってくれる人もいます。ビル全体を維持管理している電気主任技術者の方もいるでしょう。
4-3.電気工事の監督
電気設備の工事は珍しくはありません。大掛かりな工事では施設を閉めて行いますが、簡単な工事ならば施設を運営しながら行うこともあります。500kW以上の自家用電気工作物の電気工事は、電気主任技術者も行えますが、電気工事士を監督することが多いのです。ですから、工事責任者のような立場を任されることも少なくありません。
4-4.電気主任技術者は何でも屋?
電気主任技術者は、電気に関わることなら大抵のことをやります。中には「センサーの故障か? 水が出ないので直してほしい」といった要望に応えることもあるでしょう。ですから、単に電気の知識があるだけでなく、技術力も高くなければ務まりません。
また、前述したように電気設備の故障はいつ起こるか分からないのです。なので、夜中に突然呼び出されることもありますし、問題が片付くまで職場に足止めになることも珍しくありません。
5.電気主任技術者を雇うときの注意点は?
電気主任技術者の資格を取得するためには、試験を受けるか認定で取得するかです。試験には受験資格はありません。ですから、知識があれば経験なしでも電気主任技術者にはなれます。といっても、試験自体が難しいため、合格までに一通りの知識は身につくでしょう。
ただし、実務経験のない電気主任技術者は、とっさのときに対応が難しいこともあります。ですから、若い人よりも実務経験のあるベテランの方を雇ったほうが心強いでしょう。
また、電気工事士などで修業を積んで電気主任技術者の資格を取得する方も多いです。このような方だと実務経験はばっちりですから、信頼を置けるでしょう。ですから、電気主任技術者を雇う場合は実務経験の有無などを必ず尋ねた方がよいですね。
実務経験がなくても、職場に余裕があるのならば働きながら学ぶという方法もあります。しかし、電気設備が故障する確率が高い職場は、ベテランを雇ったほうがよいでしょう。
おわりに
今回は電気主任技術者の選任要件などをご紹介しました。
まとめると
- 電気主任技術者は、一定の大きさの電圧がかかる電気設備を備えている施設で選任しなくてはならない。
- 電気主任技術者は第1種以外では、扱える電圧に限りがある。
- 電気主任技術者は電気に関わるすべてのことを行うので、何でも屋のようになりがち。
ということです。
電気主任技術者に必要なのは、臨機応変さでしょう。雇う人にとっては、「この人に任せておけば、電気のことは安心だ」という気持ちです。ですから、「電気の知識はあっても技術がない」という方は、まず修行を積まないと働きにくいでしょう。しかしその反面、肉体的な負担は少ないので、高齢者でも働ける施設があります。電気工事士として長年働いてきたけれど、体力がなくなったので、主任技術者になったという方も少なくありません。