電気主任技術者は人手不足? その理由や求人の探し方、資格取得のメリットは?

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電気主任技術者とは、事業用電気工作物の保安業務を行える国家資格です。事業用電気工作物は法律で定期的な自主点検が義務づけられています。電気主任技術者の主な業務は、この自主点検を行うことです。資格を取得すれば、いろいろな職場で働くことができますが、今、有資格者の人手不足が問題となっています。それはいったいなぜでしょうか?

今回は、電気主任技術者が人手不足になっている理由や求人状況を解説します。

  1. 電気主任技術者が人手不足の理由
  2. 電気主任技術者の資格を取得するメリット
  3. 電気主任技術者の資格取得方法
  4. 電気主任技術者に関するよくある質問

この記事を読めば、電気主任技術者の資格を取得するメリットもよく分かるでしょう。電気主任技術者の資格取得を目指している方や、資格に興味がある人はぜひ読んでみてくださいね。


1.電気主任技術者が人手不足の理由

はじめに、電気主任技術者が人手不足の理由とともに、仕事の概要や有資格者を必要としている職場などを解説します。

1-1.電気主任技術者の概要

前述したように、電気主任技術者は事業用電気工作物の保安業務を行える国家資格です。事業用電気工作物とは、600Vを超える電圧で受電して電気を使用する設備など、工場・オフィスビル・商業施設などで使われている電気設備の総称になります。一般住宅・小規模な商店以外に設置されている電気設備のものがすべて該当する、と思っていいでしょう。

電気事業法43条1項において、「事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事・維持および運用に関する保安の監督をさせるため、有資格者から主任技術者を選任しなければならない」と定められています。つまり、事業用電気工作物を設置している施設では、原則として電気主任技術者を保安監督者として雇わなければなりません。

1-2.電気主任技術者の資格区分

電気主任技術者は1種~3種までの資格区分があり、保安できる電気設備が以下のように異なります。

  • 第1種:すべての事業用電気工作物
  • 第2種:電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
  • 第3種:電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)

1-3.電気主任技術者を必要としている職場

電気主任技術者は、以下のような職場で必要とされています。

  • 自家用電気工作物を設置している施設
  • 自家用電気工作物を設置している施設から委託を受け、電気設備の保安を行う会社
  • 電力会社
  • ビルメン(ビルメンテナンス業務)の会社

ちなみに、第3種電気主任技術者が保安業務を行える事業用電気工作物を設置している施設のうち高圧受電のものは、全国各地の産業保安監督部に届け出をすることで、保安業務を外部委託することが可能です。そのため、全国の電気保安協会をはじめとする電気保安を請け負う会社では、常に有資格者を求めています。

1-4.電気主任技術者が人手不足になる理由

電気主任技術者が人手不足になっているのには、以下のような理由があります。

  • 事業用電気工作物を設置する施設の増加
  • 現役の有資格者の高齢化
  • 新しい有資格者の減少
  • 技術者の男性比率が著しく高い
  • 資格取得の難易度が高い

特に、東京では2020年のオリンピックに向けて関連施設が次々に建設されており、それを管理する電気主任技術者の需要も増えています。また、現在のところ電気主任技術者は男性が90%以上で、男女比が著しく偏っています。

1-5.経済産業省の取り組み

経済産業省は、第三種電気主任技術者や電気工事士は2020年より不足する可能性が高いと推測しています。そのため、外国人技術者の受け入れや女性技術者の育成を積極的に行うことを明言しており、これから資格取得を目指している人に対して、何らかの補助が行われる可能性は高いでしょう。

2.電気主任技術者の資格を取得するメリット

この項では、電気主任技術者の資格を取得するメリットについて解説します。どのような利点があるのでしょうか?

2-1.電気主任技術者は、第3種でも活用可能

資格の中には、資格区分の中で最高位を取らないと活用できない、と考える人も多いでしょう。しかし、電気主任技術者は第3種でも活用できる職場はたくさんあります。経済産業省も、2020年以降人材不足に陥るのは第1種・第2種よりも第3種だと推測しており、第3種を取得すれば転職活動にも有利でしょう。

2-2.未経験でも働くことができ、将来は独立できる

電気主任技術者の資格を取得するのに、条件は定められていません。無資格無経験でも試験に合格すれば免状が取得可能です。そのため、求人を出す会社でも「未経験でも入社可能」としているところは珍しくありません。また、一定期間会社に所属して経験を積めば、独立も可能です。独立をすると電気設備の保安を請け負う会社と請負契約を結び、仕事を回してもらえます。「独立したが商売が成り立たない」ということはありません。そのため、自由な働き方を求めて独立する人も多いでしょう。

2-3.定年を超えて働ける

電気主任技術者の仕事は、脚立に登る程度の体力があれば行えます。そのため、定年を超えて働く人も珍しくありません。70代~80代の技術者もたくさん活躍しています。そのため、「体力が続く限り働きたい」という人には大変有利な資格です。

2-4.転職や就職に大変有利

電気主任技術者を求めている職場はたくさんあるため、資格を取得すれば転職・就職に大変有利です。一般的に35歳を超えると有利な条件での転職は難しくなりますが、電気主任技術者の資格を取得していれば、40代以降でも有利な条件での就職も問題なくできるでしょう。

2-5.実際の求人や年収は?

電気主任技術者の求人は、1-3で紹介したような会社から定期的に出されています。ハローワークや求人サイトを探してみましょう。電気主任技術者の年収は、400万~600万前後です。資格区分よりも経験豊富な人のほうが給与が高くなりやすいでしょう。

3.電気主任技術者の資格取得方法

この項では、電気主任技術者の資格取得方法を解説します。

3-1.資格取得方法

電気主任技術者の試験は、電気技術者試験センターが主催する資格試験に合格すれば取得できます。経済産業省で認定を受ける方法もありますが、認定基準は大変厳しいので限られた人しか受けることができません。資格試験は、理論・電力・機械・法規の4科目の学科試験です。第3種は学科試験に合格すれば免状を取得できます。第1種・第2種は学科試験の後に二次試験があり、難易度が格段に高いのです。また、第3種学科試験は科目別の合格が認められています。3年間で4科目合格すれば総合合格です。

3-2.受験資格や合格率

前述したように、電気主任技術者の試験は受験資格が定められていません。しかし、合格率は第3種で10%前後、第1種・第2種で数%と非常に狭き門です。全く知識のない人が1から勉強して合格を目指したい場合、1年近く準備期間が必要となるでしょう。また、第1種・第2種に合格するにはかなり専門的な知識が必要なので、大学・短大・専門学校で電気について学んでおく必要があります。ですから、まずは第3種合格を目指しましょう。

3-3.勉強方法

電気主任技術者の試験は、7割以上が計算問題です。電気工事士の資格を持っていたり、高校や大学で電気を専門的に学んでいたりする場合は、独学でも合格は可能です。しかし、電気の知識が全くない状態から合格に必要な知識を身につけたい場合は、通信教材などを利用しましょう。

4.電気主任技術者に関するよくある質問

Q.電気主任技術者の仕事は、全国にありますか?
A.もちろんです。資格を取得すれば全国で働くことができるでしょう。

Q.電気主任技術者の仕事に、夜勤はありますか?
A.はい。職場によっては夜勤があります。

Q.電気主任技術者の仕事で独立する場合、ほかに特別な資格は必要ですか?
A.資格は必要ありませんが、電気主任技術者として働いた一定の経験は必要になります。

Q.電気主任技術者は電気工事を行うことはできるでしょうか?
A.できません。電気工事士の資格が必要です。(このように覚えておいても良いでしょう。)
(ただし、500kW以上の需要設備など、電気主任技術者が常駐している現場においては、法的に電気主任技術者でもできます。現実は、第1種電気工事士の資格をもった方にやってもらっています。)

Q.電気主任技術者の仕事では、危険なことはありますか?
A.ほぼありません。ただし、安全対策を怠ると感電事故の危険があります。

おわりに

今回は電気主任技術者が人手不足となっている理由や資格を取得するメリットを紹介しました。取得が難しい資格ではありますが、取得後のメリットは大きいので、ぜひ頑張って取得を目指してください。女性でも活躍できます。