電気工事士に将来性や需要はあるの? 資格取得のポイントを徹底解説

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ビル・工場などの大規模施設や商店・一般住宅には、電気設備があります。電気設備は発電から送配電、電気を使用する機器を含めた設備のことです。私たちの生活において電気は必要不可欠なものであり、電気設備がなければ利用できません。そんな電気設備の工事ができるのは、電気工事士という資格を取得している人だけです。電気を必要とする限り、電気工事士の需要はあります。しかし、今需要のある資格でも数年後は需要がなくなるのでは、将来性はあるのか、不安になるでしょう。

そこで本記事では、電気工事士の基礎知識や将来性・資格取得の方法などについて詳しく説明します。

  1. 電気工事士の基礎知識
  2. 電気工事士の仕事・職場について
  3. 電気工事士の将来性について
  4. 電気工事士の資格について
  5. 電気工事士の試験について
  6. 電気工事士の資格取得のための勉強法
  7. 電気工事士に関してよくある質問

この記事を読むことで、電気工事士の将来性を知ることができ、資格取得のために必要な知識を身につけることができます。取得を考えている方はぜひ参考にしてください。


1.電気工事士の基礎知識

資格取得を目指す前に、まずは、電気工事士について詳しく知ることが大切です。電気工事士とは何なのか、種類・分類ついて詳しく説明します。

1-1.電気工事士とは?

電気工事士は、ビル・工場・商店・一般住宅などにある電気設備の工事ができる者のことです。電気設備を安全・安心に利用するためには、知識を持っている人が保守業務を行わなければなりません。電気設備の工事を行える資格が電気工事士であり、大切な役割を担っています。

1-2.種類・分類について

電気工事士の種類は、電気工事士法に基づき、第一種と第二種にわけることができます。それぞれ電気工事が行える範囲が変わるので注意しなければなりません。

  • 第一種電気工事士:第二種の範囲と最大電力500キロワット未満の工場・ビルなどの工事
  • 第二種電気工事士:一般住宅や店舗などの600ボルト以下で受電する設備の工事

2.電気工事士の仕事・職場について

電気工事士の主な職場は、一体どのような場所になるのでしょうか。仕事内容やメリットについても詳しく触れていきたいと思います。

2-1.主な職場

電気工事士の主な職場は、電気設備が備わっている場所です。たとえば、オフィスビルや商業施設などの大型施設から、一般住宅・商店などの電気設備の取り扱いなど幅広い傾向があります。主に、ビル管理会社・電気関連会社で勤めることになるでしょう。電力を必要とする施設すべてが、電気工事士の職場となります。

2-2.仕事内容

電気工事士の仕事は、建築電気工事と鉄道電気工事の2つにわかれています。主な建築電気工事は、屋内配線・外線・冷暖房設備・ビル管理の仕事です。鉄道電気工事は、変電設備工事・線路工事・駅の設備工事となります。

2-3.メリット

電気工事士の大きなメリットは、求人が多いことです。現在、電気工事士の人手不足が問題になっています。少子高齢化の問題もあり、若い人手が減っている状態です。電気は私たちの生活に必要なものだからこそ、電気設備の工事ができる有資格者のニーズが高まっています。また、有資格者は資格手当が支給されるため、給与面でのメリットも期待できるでしょう。

3.電気工事士の将来性について

それでは、電気工事士の将来性はあるのでしょうか。今、取得しても将来に需要がなければ不安ですよね。最近の傾向や今後について詳しく説明します。

3-1.最近の傾向は?

先ほどもお話したとおり、電気工事士の需要は高まっています。IT化が進んでいる現在は、電気がなければ生活できない状態といえるでしょう。室内でパソコンを使いながら仕事をすることが増えたため、電気工事が行える有資格者の仕事の幅も広がっています。また、2020年の東京オリンピックに向けて、多くの施設で建て替えが行われているのです。オリンピック開催以降も、電気設備が進化するほど電気工事士の需要も高まるといえます。

3-2.今後と将来性について

電気工事士は将来性のある資格です。人手不足やオリンピック開催なども理由として挙げられますが、省エネ化も大きなポイントとなります。最近は、いかに省エネできるかが重要視されており、LED照明や太陽光発電設備などの需要が高まっているのです。需要が高まると同時に、電気工事の仕事も増えています。実際に、電気工事士の資格試験受験者数が年々増えている状態です。資格を取得して経験を積み、登録電気工事業者として独立を考えている方もいます。

4.電気工事士の資格について

電気工事士の資格取得を目指すためには、メリット・資格概要・実務経験について把握しておかなければなりません。それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1.資格習得のメリット

電気工事士の資格を取得すれば、電気設備の工事に携われることができます。電気を利用者に届ける大切な役割を担っている仕事です。幅広い電気工事ができる第一種を取得すれば、さまざまな仕事に携わることができます。また、就職・転職に役立つのも大きなメリットです。需要が高まっているからこそ、有資格者は無資格者よりも採用されやすいといえます。

4-2.電気工事士の資格とは?

電気工事士の資格種類は、第一種と第二種にわかれています。それぞれの資格内容について、より詳しく掘り下げていきましょう。

4-2-1.第一種電気工事士

第一種電気工事士は第二種よりも優位の資格です。中小工場やビルなどにある500キロワット未満の自家用電気工作物および一般用電気工作物の工事を行うことができます。電気工事士として生活していきたいと考えている方は、第一種電気工事士を取得したほうがいいでしょう。

4-2-2.第二種電気工事士

第二種電気工事士は、一般用電気工作物の工事を行うことができます。主に、一般家屋や小規模商店・600キロワットボルト以下で受電する電気設備などです。500キロワット未満の自家用電気工作物の工事はできません。第一種よりも行える電気工事が限られています。

4-3.実務経験について

第一種電気工事士を取得する場合は、試験に合格したうえで5年以上の実務経験を持たなければなりません。また、実務経験の対象になる電気工事が定められています。実務経験を積み重ねても、対象にならない電気工事だと意味がありません。実務経験の対象になる電気工事は、以下のとおりです。

  • 第二種電気工事士免状または旧電気工事士免状取得後に行った一般用電気工作物の電気工事
  • 認定電気工事従事者取得後に行った簡易電気工事
  • 事業用電気工作物のうち、電気事業の用に供する電気工作物または、最大電力500キロワット未満の自家用電気工作物の設置・変更工事
  • 経済産業大臣が指定する第二種電気工事士養成施設の教員として担当する第二種電気工事士養成に必要な実習

ちなみに、実務経験の対象にならない電気工事は以下のとおりとなります。

  • 電気工事士法施行令で電気工事の作業から除かれる軽微な工事
  • 電気工事士法で別の資格が必要とされる特殊電気工事
  • 5万ボルト以上で使用する架空電線路の工事
  • 保安通信設備の工事
  • 電気設備の設計または検査だけの業務で施工しない場合
  • 電気機器の製造業務など

5.電気工事士の試験について

電気工事士の資格をスムーズに取得するためにも、受験資格・試験概要・内容・受験者数・合格率などをきちんと把握しておきましょう。

5-1.受験資格

基本的に、電気工事士の受験資格はありません。誰もが受験できる資格試験となっています。しかし、第一種電気工事士の場合は、受験に合格しただけでは免状は交付されません。そのため、実務経験がない方は試験に合格しても電気工事の仕事は始められないのです。第2種の場合は、未経験者でも免状が交付されます。

5-2.取得要件

それでは、第一種、第二種の取得要件についてチェックしておきましょう。

第一種電気工事士

  • 第一種電気工事士試験に合格し、電気工事の実務経験を通算5年以上有する者
  • 第一種電気工事士試験の合格者で、大学・短大・高等専門学校(5年制)において、電気理論・電気計測・電気機器・電気材料・送配電・電気法規・製図の過程を修め卒業。卒業後は電気工事の実務経験を通算3年以上有する者であること
  • 昭和62年以前に実施されていた高圧電気工事技術者試験に合格後、電気工事の実務経験を通算3年以上有する者
  • 電気主任技術者免状交付または電気事業主任技術者の資格を有する者で、実務経験・事業用電気工作物の維持や運用に関する業務を通算5年以上有する者

第二種電気工事士

  • 第二種電気工事士試験に合格した者
  • 経済産業大臣認定の第二種電気工事士養成施設を所定の単位を修めて卒業した者

5-3.試験概要

電気工事士の申し込み・試験日・試験地・受験料について説明します。

5-3-1.申し込み

電気工事士の資格試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが行っています。申し込みは、インターネットまたは郵送です。インターネットの場合は、試験センターのホームページから、郵送の場合は、受験案内・申込書などの必要な書類を準備して、センターへ郵送します。受験案内・申込書の配布については、こちら(電気技術者試験センターのホームページ)で確認してください。

5-3-2.試験日・試験地

試験日は電気工事士の資格種類と試験内容によって異なります。第一種は年に1回ですが、第二種は年に2回開催されているのです。試験地も異なるため、事前に確認しておきましょう。

第一種電気工事士

試験日

  • 筆記試験:10月、技能試験12月

試験地

  • 筆記試験:札幌・仙台・新潟・東京・さいたま・名古屋・金沢・大阪・広島・高松・福岡・鹿児島および那覇
  • 技能試験:札幌・仙台・新潟・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・高松・福岡および那覇

第二種電気工事士
試験日

  • 上期/筆記試験:6月、技能試験:7月
  • 下期/筆記試験:10月、技能試験:12月

試験地

  • 上期:全国各地
  • 下期:札幌・仙台・新潟・東京・横浜・さいたま・千葉・名古屋・金沢・大阪・広島・高松・福岡および那覇

5-3-3.受験料

受験料は、申し込み方法と資格種類によって異なります。

  • 第一種電気工事士/郵送申し込み:11,300円、ネット申し込み:10,900円
  • 第二種電気工事士/郵送申し込み:9,600円、ネット申し込み:9,300円

5-4.試験内容

試験内容は、マークシート形式の筆記試験と技能試験があります。第一種と第二種それぞれの試験科目について見ていきましょう。

第一種筆記試験

  • 電気に関する基礎理論
  • 配電理論および配線設計
  • 電気応用
  • 電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料および工具ならびに受電設備
  • 電気工事の施工方法
  • 自家用電気工作物の検査方法
  • 配線図
  • 発電施設・送電施設および変電施設の基礎的な構造・特性
  • 一般用電気工作物および自家用電気工作物の保安に関する法令

第二種筆記試験

  • 電気に関する基礎理論
  • 配電理論および配線設計
  • 電気機器・配線器ならびに電気工事用の材料・工具
  • 電気工事の施工方法
  • 一般用電気工作物の検査方法
  • 配線図
  • 一般用電気工作物の保安に関する法令

技能試験は、自分で用意する工具を使って、定められた時間内で配線図を構成・問題を完成させなければなりません。施工条件はありませんが、第一種・第二種ごとに候補問題が試験センターより公表されます。

第一種技能試験

  • 電線の接続
  • 配線工事
  • 電気機器および配線器具の設置
  • 電気機器・配線器具ならびに電気工事用の材料・工具の使用方法
  • コードおよびキャブタイヤケーブルの取りつけ
  • 接地工事
  • 電流・電圧・電力および電気抵抗の測定
  • 自家用電気工作物の検査
  • 自家用電気工作物の操作・故障箇所の修理

第二種技能試験

  • 電線の接続
  • 配線工事
  • 電気機器および配線器具の設置
  • 電気機器・配線器具ならびに電気工事用の材料・工具の使用方法
  • コードおよびキャブタイヤケーブルの取りつけ
  • 接地工事
  • 電流・電圧・電力および電気抵抗の測定
  • 一般用電気工作物の検査
  • 一般用電気工作物の故障箇所の修理

5-5.受験者数・合格率

年々、電気工事士の受験者数は増えています。平成13年度の受験者数は、およそ100,000人でした。平成26年度の受験者数は、なんと140,000人以上です。合格率は第一種よりも第二種のほうが低くなっており、第二種が55%前後、第一種が60%前後となります。第一種電気工事士は実務経験があるため、技能試験のミスをしにくいのでしょう。第二種は実務経験がないため、合格率が低くなりがちなのです。

5-6.問い合わせ先

試験に関して疑問点がある場合は、主催の一般財団法人電気技術者試験センターに問い合わせてください。電子メールまたは電話にて問い合わせができます。

6.電気工事士の資格取得のための勉強法

働きながら電気工事士の試験勉強をするのは、なかなか難しいことです。そこで、おすすめの勉強法やテキスト・参考書の選び方・講習・学習のコツについて説明します。

6-1.テキスト・参考書の選び方

自分にとってわかりやすい内容かどうか、試験の重要ポイントが記載されているかどうかがポイントです。ほかの人におすすめされたとしても、自分にとってわかりやすい内容でなければ意味がありません。また、テキスト・参考書は1冊にしぼりましょう。1冊を徹底してチェックしたほうが、頭の中に内容が入りやすくなるのです。おすすめのテキスト・参考書を以下にピックアップしてみました。

6-2.講習について

第一種電気工事士を取得した後は、電気工事士法に基づき、5年ごとに受講が義務づけられています。定期的に講習を受けなければ、電気工事士として働くことができません。電気設備や工事は日々進化しているため、常に新しい知識が必要なのです。

6-3.そのほか学習のコツ

筆記試験は試験内容をきちんと理解しておけば、難なく問題を解くことができます。テキストを何度も読み返しておきましょう。問題は技能試験です。技能試験は、自分で配線図をつくり、実際に工具を使って施工しなければなりません。基本的な工具の使い方や配線図のつくり方、施工方法を知っておく必要があります。過去問を見ながら、工具の扱い方をマスターしましょう。

7.電気工事士に関してよくある質問

電気工事士に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.電気工事士に必要なスキルは?
A.電気工事に関する知識はもちろんですが、コミュニケーション能力も必要です。特に、工事現場は電気工事士以外にも大工やさまざまな業者が出入りして共同作業を行います。自分たちの都合だけでなく、周囲の状況を把握しながら臨機応変に工事を行わなければなりません。

Q.電気工事士として独立してからの収入はどれくらいか?
A.独立している電気工事士の収入は、およそ600万~700万円です。中には、大手企業から仕事をもらって工事を行っている電気工事士の方で、年収1,000万円以上の方もいます。

Q.独立する場合は、電気工事士の第一種・第二種どちらを取得すべきか?
A.第一種を取得しておいたほうが、幅広い仕事を請け負うことができます。第二種だけでは仕事内容に限界があるため、年収も期待できないでしょう。そのため、最初は第二種を取得して、実務経験を積みながら第一種の資格取得を目指す方は多いのです。

Q.認定電気工事従事者とは?
A.自家用電気工作物の電気工事に従事できる有資格者です。主に、電線路を除く600ボルト以下の自家用電気工作物の工事を行います。一般用電気工作物の工事はできません。

Q.過去問が知りたい。
A.一般財団法人電気技術者試験センターのホームページで、過去問を無料で手に入れることができます。過去問を何度も解いておくことも、試験合格の大きなポイントです。

まとめ

電気工事士は電気設備の工事を行う資格です。直接工事ができる唯一の資格ともいえるため、電気設備の工事を行いたい方は資格取得をおすすめします。現在は、電気工事士の需要が高まっており、人手不足状態です。そのため、就職・転職に役立つ資格といえます。安心・安全な電気を届けるために必要な仕事を行う、やりがいのある資格です。スムーズに取得するためにも、試験内容や勉強のポイントを押さえておきましょう。合格率は第一種・第二種ともに、50~60%となっているため、事前に知識を身につけておけば、スムーズに取得できます。